[From Model to Bedside: E1.4] 【Ubuntu編】医療AI開発のためのNVIDIAドライバ導入ガイド(2025年版)

学習のポイント:UbuntuへのNVIDIAドライバ導入

本記事では、AI研究に最適なネイティブUbuntu環境の構築を目指し、NVIDIAドライバをインストールする際のプロの作法を解説します。将来のトラブルを避けるための賢いインストール方法(DKMS)の選択と、多くの人がつまずくSecure BootとMOK登録という関門の突破が、安定した開発環境を実現する鍵となります。

賢いインストール手法
DKMSによる自動更新

NVIDIA公式サイトの.runファイルはカーネル更新で破損する危険が伴います。必ずUbuntu公式のGUI(追加のドライバー)またはCUI(sudo ubuntu-drivers autoinstallを使いましょう。どちらもDKMSという仕組みで、OS更新時にドライバを自動再構築するため、長期的な安定性が保たれます。

Secure Bootの突破
MOK登録による承認

セキュリティ機能Secure BootがNVIDIAドライバの読込をブロックします。解決策は、再起動時の青い画面でのMOK (Machine Owner Key) 登録です。一時パスワードを設定・入力し、所有者としてドライバを承認することでGPUが有効になります。最後にnvidia-smiで成功を確認します。

Ubuntu NVIDIAドライバ導入 クイックリファレンス

1. ドライバのインストール

以下のどちらかの方法でインストールを実行します。

  • GUI(マウス操作)の場合:
    1. アプリ一覧から「ソフトウェアとアップデート」を起動します。
    2. 「追加のドライバー」タブを開きます。
    3. リストの中から (プロプライエタリ, テスト済み) と書かれた最新バージョンのNVIDIAドライバを選択し、「変更の適用」をクリックします。
  • CUI(コマンド操作)の場合:
    1. ターミナル(Ctrl+Alt+T)を開きます。
    2. sudo ubuntu-drivers autoinstall と入力し、Enterキーを押します。

2. MOKパスワードの設定(Secure Bootが有効なPCのみ)

インストール作業の終盤に青い画面が表示されたら、この手続きのためだけの一時的なパスワード(例: 12345678)を設定し、確認のためもう一度入力します。

3. システムの再起動

インストールが完了したら、PCを再起動します。
ターミナルからは sudo reboot コマンドで再起動できます。

4. MOKの登録(Secure Bootが有効なPCのみ)

再起動中に、再び青い背景の「MOK management」画面が表示されます。

  1. キーボードの矢印キーで「Enroll MOK」を選択し、Enterキーを押します。
  2. 次の画面で「Continue」を選択し、Enterキーを押します。
  3. 「Enroll the key(s)?」と尋ねられたら、「Yes」を選択し、Enterキーを押します。
  4. 手順2で設定した一時的なパスワードを入力し、Enterキーを押します。
  5. 最初の画面に戻ったら、「Reboot」を選択して再度PCを再起動します。

5. 最終確認

Ubuntuが起動したらターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。codeCode

nvidia-smi

GPUの名前やドライバのバージョンが記載された表が表示されれば、すべての手順は成功です。

Secure Boot有効時のMOK登録も完全解説!

前回の記事では、Windowsの利便性とLinuxのパワーを両立させる「WSL2」という道筋を探求しました。そして今回は、AI開発の「王道」とも言える、もう一つのルートへ足を踏み入れます。ようこそ、ネイティブUbuntuの世界へ。

あえてこの道を選んだあなたは、おそらく「余計な回り道はせず、最もパワフルで安定した環境で、まっすぐに研究の核心へ迫りたい」と考えているのではないでしょうか。WSL2が利便性に優れた「多目的ラボ」だとすれば、ネイティブUbuntuは、ただ一つの目的――AIという研究テーマ――のために最適化された、「専用の高性能研究施設」を建てるようなものです。その選択は、多くのトップ研究者が支持する、間違いなく「正解」の一つだと私も思います。

この記事では、そのピュアなUbuntu環境に、NVIDIAドライバをインストールしていきます。しかし、ただ動けば良いというわけではありません。将来にわたって安定して動作させるための「プロフェッショナルな作法」に則って導入します。さらに、多くの初学者がつまずきがちな「Secure Boot」という壁も、単なる障害としてではなく、PCの仕組みをより深く理解する機会として、その原理から一緒に乗り越えていきましょう。


目次

始まりの心得:なぜ「楽な道」(.run)ではなく「賢い道」(DKMS)を選ぶべきか

本格的な手順に入る前に、このガイドで最も重要かもしれない、一つの「心得」をお伝えさせてください。これは、過去に多くの開発者が時間を溶かしてきた失敗を、あなたが繰り返さないための、先人たちの知恵でもあります。

結論から言うと、NVIDIAドライバのインストールは、必ずUbuntuが公式に提供する仕組み(GUIの「追加のドライバー」や、コマンドラインのapt)を使いましょう。

The Trap: 見せかけの「楽な道」(.runインストーラ)

NVIDIAの公式サイトに行くと、NVIDIA-Linux-x86_64-xxx.xx.run のような、いかにも公式で正しそうなインストーラファイルがダウンロードできます。これを実行するだけでインストールできるため、一見すると最も簡単な道に見えるかもしれません。

しかし、これは「一度だけ機能する鍵」のようなものです。この方法でインストールしたドライバは、その瞬間のLinuxカーネル(OSの心臓部)のバージョンに合わせて、オーダーメイドでコンパイルされます。

問題は、Ubuntuがセキュリティや機能改善のために、sudo apt upgradeなどで定期的にカーネルをアップデートすることです。ビルの管理人がセキュリティのためにドアの錠前(カーネル)を新しいものに交換したと想像してください。あなたが持っていたオーダーメイドの鍵(.runで入れたドライバ)は、もはやそのドアを開けることはできません。結果として、PCを再起動した際にドライバの読み込みに失敗し、画面が真っ暗になる――多くの初心者が絶望する「ブラックアウト」に陥る典型的なパターンです。

The Wisdom: 未来のための「賢い道」(DKMS)

一方で、Ubuntuの公式な方法でインストールすると、DKMS (Dynamic Kernel Module Support) という、驚くほど賢い仕組みが自動的に有効になります(6)。

DKMSは、あなたのPC内に常駐する「マスターキー職人」だと考えてください。

このDKMSというキー職人のおかげで、私たちはカーネルがアップデートされる度にドライバのことを心配する必要が一切なくなります。あなたの研究室は、面倒なメンテナンスを自動で行ってくれる、自己修復能力を持った、極めてレジリエント(強靭)な環境になるのです。

手間のかかるトラブルシューティングから解放され、本来の研究活動に集中できること。これこそが、私たちが回り道に見えても「賢い道」を選ぶ、最大の理由です。


導入手法その1:クリックだけで完結!GUIによる最も簡単なアプローチ

それでは、具体的な導入作業に入りましょう。まずは、ターミナル(黒いコマンド画面)を一切使わずに、マウスクリックだけで完結する最も簡単な方法からご紹介します。Ubuntuのデスクトップ環境に慣れていない方や、コマンド操作は少し不安…という方には、この方法が最もおすすめです。

手順は、大きく分けて4つのステップです。一つずつ見ていきましょう。

GUIによるNVIDIAドライバ導入ガイド
コマンド不要、クリックだけで完結する最も簡単な導入手順をインタラクティブに体験します。
1. 「ソフトウェアとアップデート」を起動

まず、ドライバを管理する専門のアプリケーションを呼び出します。

画面左下の「アプリケーションを表示する」アイコンをクリックし、検索バーに software と入力します。オレンジ色のフォルダに青い矢印が描かれた「ソフトウェアとアップデート」アプリを見つけ、クリックして起動してください。

2. 「追加のドライバー」タブに移動

ウィンドウが開いたら、上部タブの一番右にある「追加のドライバー」をクリックします。

「利用可能なドライバーを検索しています…」というメッセージが表示されます。システムがハードウェアをスキャンし、適合するドライバのリストを準備するまで、数十秒ほどお待ちください。

3. 最適なドライバーを選択

検索が完了すると、利用可能なドライバの選択肢が表示されます。AI研究のパフォーマンスを最大化するため、最適なものを選択しましょう。

オープンソース (Nouveau)
コミュニティ開発のドライバ。CUDA等、AI計算に必要な機能には対応しておらず、性能も限定的です。
4. 再起動して完了

最適なドライバを選択し「変更の適用」をクリック後、インストールが完了したら、必ずPCを再起動してください。

再起動は、古い設定をクリアし、新しいNVIDIAドライバをシステムに完全に認識させるための重要な「儀式」です。このステップを省略すると、ドライバが正しく有効になりません。

1. 「ソフトウェアとアップデート」を起動する

まず、ドライバを管理している専門のアプリケーションを呼び出します。

画面左下にある、点が9つ並んだ「アプリケーションを表示する」アイコンをクリックしてください。すると、PCにインストールされているアプリの一覧が表示されます。上部の検索バーに「software」あるいは「ソフトウェア」と入力すると、オレンジ色のフォルダに青い矢印が描かれた「ソフトウェアとアップデート」というアプリが見つかるはずです。これをクリックして起動します。

2. 「追加のドライバー」タブに移動する

「ソフトウェアとアップデート」のウィンドウが開いたら、上部にあるいくつかのタブの中から、一番右の「追加のドライバー」をクリックします。

クリックすると、「利用可能なドライバーを検索しています…」というメッセージが表示されます。これは、UbuntuがあなたのPCに搭載されているハードウェア(特にGPU)をスキャンし、それに適合するドライバのリストを準備している時間です。お使いの環境によっては数十秒かかることもありますので、少し気長に待ちましょう。

3. 最適なドライバーを選択し、「変更の適用」をクリック

検索が完了すると、あなたのGPUで利用できるドライバの選択肢が一覧で表示されます。ここで、あなたの研究環境にとって「最適解」を選ぶことが重要です。

多くの場合、以下のような選択肢が表示されるはずです。

  • NVIDIA driver metapackage from nvidia-driver-5xx (プロプライエタリ, テスト済み)
  • X.Org X server — Nouveau display driver … (オープンソース)

ここで選ぶべきは、「(プロプライエタリ, テスト済み)」と書かれていて、バージョンの数字が最も大きいものです。これがあなたのAI研究を最大限に加速させるための、ほぼ唯一の正解と言えるでしょう。

ラベルの意味を解読しよう

  • プロプライエタリ (Proprietary): 「製造元であるNVIDIA自身が開発した、公式の高性能ドライバ」という意味です。車の修理で言えば、メーカーの「純正部品」にあたります。最高のパフォーマンスと機能性を引き出すには、これ一択です。
  • テスト済み (Tested): 「Ubuntuの開発チームが、あなたのOSバージョンで安定して動作することを保証しますよ」というお墨付きです。信頼性の証ですね。
  • オープンソース (Nouveau): こちらはコミュニティによって開発されているドライバです。素晴らしいプロジェクトではありますが、残念ながら、CUDAを使った高度なAI計算などには対応しておらず、性能も限定的です。

最適なドライバを選択したら、ウィンドウの右下にある「変更の適用」ボタンをクリックします。システムの重要な部分を変更するため、あなたのパスワードを尋ねられますので、正確に入力してください。

4. 最後の仕上げ:PCを再起動する

ドライバのインストールには数分かかります。プログレスバーがいっぱいになり、変更が完了したら、この作業の最後の、そして非常に重要な仕上げです。必ずPCを再起動してください。

再起動は、PCに変更内容を完全に認識させ、古いドライバ(あるいはドライバが何も入っていない状態)から新しいNVIDIAドライバへと、きれいにバトンタッチさせるための大切な儀式です。このステップを省略すると、ドライバが正しく有効になりません。

(もしこの後の再起動で、後述する「MOK登録」の青い画面が表示された場合は、慌てずにそちらのセクションの指示に従ってください。)


導入手法その2:プロが好む「CUI」による高速・確実なアプローチ

GUIによるクリック操作も手軽で良いものですが、もしあなたが「より速く、何が起きているかを正確に把握しながら、確実に作業を進めたい」と考えるなら、こちらのCUI(コマンドライン・ユーザーインターフェース)によるアプローチが最適です。これは多くのプロの開発者や研究者が好む方法で、一度慣れてしまえば、これ以上なく効率的な手法だと感じるはずです。

GUIが写真付きの分かりやすい「セットメニュー」を注文するのに似ているとすれば、CUIは厨房にいるシェフ(システム)と直接対話し、オーダーを伝えるようなものです。さあ、システムのコックピットに入ってみましょう。

Ubuntu Terminal
※これはシミュレーションです。実際のコマンドは実行されません。
▶ 実行用の安全なコマンド一覧(コピー&ペースト用)

Ubuntu Terminal

以下のコマンドをターミナルで順番に実行することで、NVIDIAドライバを確実かつ迅速にインストールできます。

# 1. 推奨されているドライバのバージョンを確認します sudo ubuntu-drivers devices # 2. 推奨ドライバを自動でインストールします sudo ubuntu-drivers autoinstall # 3. インストール完了後、システムを再起動して変更を適用します sudo reboot

1. システムの司令室「ターミナル」を開く

まずは、システムに直接命令を下すための「司令室」であるターミナルを起動します。キーボードの Ctrl + Alt + T を同時に押すのが、最も速いショートカットです。画面に黒いウィンドウが表示されれば準備OKです。

2. システムとの対話:推奨ドライバーを確認する (ubuntu-drivers devices)

次に、私たちのPCにどんなGPUが搭載されていて、それに対してUbuntuがどのドライバを推奨しているのかを尋ねてみましょう。以下のコマンドを入力し、Enterキーを押してください。


# `sudo` : これから実行するコマンドを、システムの最高権限(管理者)で実行します、という宣言。
# `ubuntu-drivers` : Ubuntuに搭載された、ドライバ管理専用のツール名。
# `devices` : このツールに「デバイスの情報を表示せよ」と命令しています。
sudo ubuntu-drivers devices

sudoを初めて実行するとパスワードを求められますので、ログイン時のパスワードを入力してください(画面には表示されません)。実行すると、以下のような情報が返ってきます。


== /sys/devices/pci0000:00/0000:00:01.0/0000:01:00.0 ==
modalias : pci:v000010DEd00002782sv...
vendor   : NVIDIA Corporation
model    : AD104 [GeForce RTX 4070 SUPER]
driver   : nvidia-driver-535 - distro non-free
driver   : nvidia-driver-550-server - distro non-free
driver   : nvidia-driver-550 - distro non-free recommended
driver   : xserver-xorg-video-nouveau - distro free builtin

ここで注目すべきは、最後に recommended と付いている行です。これが、現在のあなたの環境にとって「最も推奨されるドライバ」であることを示しています。

3. 「おまかせ」で最適解をインストール (ubuntu-drivers autoinstall)

推奨されるドライバが分かったら、あとはシステムに「あなたのおすすめを、よしなにお願いします」と伝えるだけです。以下のコマンドが、その「よしなに(自動で)」をやってくれます。


# `autoinstall` : ubuntu-drivers ツールに、推奨されるドライバを自動でインストールするように命令します。
sudo ubuntu-drivers autoinstall

この一行のコマンドが、先ほど確認したrecommendedなドライバを、私たちが「心得」の章で学んだDKMSの仕組みを使いながら、安全かつ確実にインストールしてくれます。裏側ではGUIの時と同じことが、より速く進行しているわけですね。

4. 変更を確定させる再起動 (sudo reboot)

インストールが完了したら、GUIの時と同様、最後の仕上げにPCを再起動します。以下のコマンドを入力すると、システムが安全に再起動プロセスに入ります。


# システムを即座に再起動します。
sudo reboot

この再起動によって、新しいNVIDIAドライバがカーネルに読み込まれ、完全に有効化されます。(もしこの後の再起動で、次章で解説する「MOK登録」の青い画面が表示された場合は、慌てずにそちらの指示に従ってください。)


避けては通れない関所:「Secure Boot」をMOK登録で突破する

さて、ここがUbuntu環境構築における、もう一つの、そして最後の山場です。最近のPCのほとんどは、Secure Boot(セキュアブート)というセキュリティ機能がデフォルトで有効になっています。これを理解し、正しく設定することが、ドライバを確実に動作させるための鍵となります。(Secure Bootが無効化されている場合、このMOK登録プロセスは表示されません。)

なぜこれが「関所」になるのか?

まずは、この関所の役割と、私たちがなぜ特別な「通行許可証」を必要とするのかを理解しましょう。

Secure Bootとは?
PCの電源を入れた瞬間に仕事を始める、OS起動前の「厳格な警備員」のようなものです(7)。この警備員は、PCメーカーやMicrosoft、Ubuntuの開発元(Canonical)など、信頼できる機関が発行した「公式のデジタル許可証(デジタル署名)」を持つソフトウェアしか、PCの起動プロセスに通さない、という重要な役割を担っています。これにより、悪意のある不正なプログラムがPCの根幹に入り込むのを防いでいるのです。

なぜNVIDIAドライバは止められる?
私たちがインストールしようとしているNVIDIAの公式ドライバは、最高の性能を発揮する非常に優れたものですが、その「許可証」はNVIDIA自身が発行したものです。そのため、PCの警備員から見ると、「私の知らない機関が発行した許可証だ。これが本当に安全なものか、私には判断できない。よって、通行は許可できない」となってしまい、ドライバの読み込みがブロックされてしまうのです。

解決策はMOK (Machine Owner Key) 登録
この問題を解決するため、私たちはMOK (Machine Owner Key)という仕組みを使います。これは、PCの所有者(Machine Owner)である私たちが、警備員に対して「このNVIDIAドライバは、私が身元を保証する。安全なものだから通してよし」と、特別な通行許可を自ら発行するための、一回限りの手続きです。いわば、私たちがPCの「主」として、特権を行使するわけですね。

MOK登録のハンズオン手順

この手続きは、これまでの手順でドライバをインストールする最中と、その後の再起動時という、2つの場面に分かれて行われます。慌てず、画面の指示に従いましょう。

関所を突破せよ:Secure BootとMOK登録
NVIDIAドライバを有効化する最後の山場「MOK登録」。その仕組みと手順を、シミュレーションで安全に体験しましょう。
Secure Boot
OS起動前の厳格な警備員。信頼された機関の「許可証(デジタル署名)」を持つソフトウェアのみ起動を許可します。
NVIDIAドライバ
NVIDIA発行の許可証を持つ高性能ドライバ。警備員にとっては「未知の許可証」のため、通行を止められてしまいます。
MOK 登録
PCの所有者である私たちが「このドライバは安全」と警備員に教える特別な通行許可手続きです。
Configure Secure Boot
ドライバのインストール終盤、この画面が表示されます。これが「通行許可証」準備の合図です。
Configure Secure Boot
再起動後に一度だけ使う、一時的なパスワードを設定します。(例: 12345678)
Configure Secure Boot
確認のため、もう一度同じパスワードを入力してください。
準備完了
パスワードを記憶し、PCを再起動してください。
第2幕が始まります。
Perform MOK management
再起動後、この画面が表示されます。これが警備員との最終対話です。
Enroll MOK
登録を続けます。
Enroll the key(s)?
このキーを登録しますか?
Password
第1幕で設定した一時的なパスワードを入力してください。
Perform MOK management
登録に成功しました。最初の画面に戻ります。
登録完了!
これで警備員はあなたのNVIDIAドライバを仲間と認識します。以降、この画面は表示されません。

第1幕:インストール中の「通行許可証」の準備

ドライバのインストールが終盤に差し掛かると、ターミナルやソフトウェアインストーラの画面上に、以下のような青い背景の画面が表示されることがあります。これが「これから通行許可証を発行しますよ」という合図です。

  1. Ok が選択されていることを確認し、Enterキーを押します。
  2. 次の画面で、パスワードの設定を求められます。ここで、この手続きのためだけの一時的なパスワード(8文字以上が推奨。例: 12345678)を入力してください。
  3. 確認のため、もう一度同じパスワードを入力します。

このパスワードは、次の再起動で一度だけ使う「使い捨ての鍵」です。複雑なものである必要はありませんが、次のステップまで覚えておいてください。

第2幕:再起動後の「警備員」との対話

ドライバのインストールが完了し、PCを再起動すると、いつものUbuntuのロゴが表示されるに、再び青い背景のMOK managementという画面が表示されます。これが、警備員との最終対話の場です。キーボードの矢印キーとEnterキーで操作します。

  1. Enroll MOK (MOKを登録する)を選択し、Enterキーを押します。
  2. Continue (続ける)を選択し、Enterキーを押します。
  3. 「Enroll the key(s)?」(このキーを登録しますか?)と尋ねられるので、Yes を選択し、Enterキーを押します。
  4. ここで、先ほど第1幕で設定した一時的なパスワードの入力を求められます。正確に入力し、Enterキーを押してください。
  5. 成功すると、最初の画面に戻ります。最後に Reboot (再起動)を選択し、Enterキーを押します。

これで、MOKの登録、すなわち「特別な通行許可証」の発行は完了です。警備員はあなたのNVIDIAドライバを「許可された、信頼できる仲間」として認識し、以降はPCを起動するたびに、スムーズに読み込んでくれるようになります。


最終確認:nvidia-smiでラボの電源投入!

お疲れ様でした。基礎工事が完了し、やっかいだった関所も無事に通過しました。いよいよ、私たちの新しいAIラボのメインスイッチを入れ、全ての機器が正しく接続されているかを確認する、最も満足感のある瞬間です。

Ubuntuのデスクトップに戻り、Ctrl + Alt + T でターミナルを起動してください。そして、NVIDIA製GPUの「健康診断」を行うための、世界共通のコマンドを打ち込みましょう。


# NVIDIA System Management Interface (nvidia-smi) コマンドを実行し、
# GPUの現在の状態を問い合わせます。
nvidia-smi

Enterキーを押した瞬間、あなたの目の前に以下のような、情報が詰まった美しい表が表示されたなら… 完璧です!思わず拍手したくなる瞬間ですね。🎉


+-----------------------------------------------------------------------------+
| NVIDIA-SMI 535.171.04   Driver Version: 535.171.04   CUDA Version: 12.2     |
|-------------------------------+----------------------+----------------------+
| GPU  Name        Persistence-M| Bus-Id        Disp.A | Volatile Uncorr. ECC |
| Fan  Temp  Perf  Pwr:Usage/Cap|         Memory-Usage | GPU-Util  Compute M. |
|                               |                      |               MIG M. |
|===============================+======================+======================|
|   0  NVIDIA GeForce ...  Off  | 00000000:01:00.0 Off |                  N/A |
| 40%   38C    P8    29W / 450W |     10MiB / 24564MiB |      0%      Default |
|                               |                      |                  N/A |
+-------------------------------+----------------------+----------------------+

この画面は、あなたのUbuntuがNVIDIAドライバを正しく認識し、GPUと完璧に対話できていることを示す、何よりの証拠です。特に Driver VersionGPU Name、そしてVRAMの総量を示す Memory-Usage が表示されていれば、問題ありません。

これであなたは、カーネルのアップデートを恐れることのない、長期的に安定した、ピュアなAI開発環境を手に入れたことになります。

もし表示されなかったら?(トラブルシューティング)

万が一 command not found などのエラーが表示された場合、最も一般的な原因はSecure BootとMOK登録のプロセスです。以下の点を確認してみてください。

  • MOK登録は完了しましたか? 前の章で解説した、再起動時の青い画面でのMOK登録プロセスは、正しく完了しましたか? もし自信がなければ、一度ドライバをアンインストールし、再度インストールプロセスを繰り返して、MOK登録をやり直すのが最も確実な解決策になることがあります。
  • ドライバは正しく選択しましたか? GUIでインストールした場合、「プロプライエタリ, テスト済み」のドライバを確実に選択しましたか?
  • 再起動は試しましたか? 何か問題が起きた時、もう一度PCを再起動することで解決する場合もあります。

まとめと次のステップへ

お疲れ様でした!今回は、ネイティブなUbuntu環境に、最も堅牢で推奨される方法でNVIDIAドライバをインストールし、Secure Bootの課題もクリアしました。

これであなたのAIラボの「エンジン」は、最高の状態で稼働準備が整いました。次の記事「E0.1.3: Python + PyTorch(GPU) 環境構築」では、いよいよこのエンジンを使って実際にAIモデルを動かすための、プログラミング環境を構築していきます。ぜひ続けてご覧ください。


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医療者の能力拡張とデータ駆動型医療への航海を後押しします。


引用文献

  1. Ubuntu Community Help Wiki. Dynamic Kernel Module Support (DKMS). [Online]. Available: https://help.ubuntu.com/community/DKMS
  2. Ubuntu Community Help Wiki. SecureBoot. [Online]. Available: https://help.ubuntu.com/community/UEFI/SecureBoot

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この記事を書いた人

医師・医学博士・AI研究者・連続起業家
元厚生労働省幹部・ハーバード大学理学修士・ケンブリッジ大学MBA・コロンビア大学行政修士(経済)
岡山大学医学部卒業後、内科・地域医療に従事。厚生労働省で複数室長(医療情報・救急災害・国際展開等)を歴任し、内閣官房・内閣府・文部科学省でも医療政策に携わる。
退官後は、日本大手IT企業や英国VCで新規事業開発・投資を担当し、複数の医療スタートアップを創業。現在は医療AI・デジタル医療機器の開発に取り組むとともに、東京都港区で内科クリニックを開業。
複数大学で教授として教育・研究活動に従事し、医療関係者向け医療AIラボ「Medical AI Nexus」、医療メディア「The Health Choice | 健康の選択」を主宰。
ケンブリッジ大学Associate・社会医学系指導医・専門医・The Royal Society of Medicine Fellow

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