[From Model to Bedside: E1.3] 【ハンズオン】Windowsで医療AI開発環境を構築:WSL2とGPU設定の完全ガイド(2025年バージョン)

WindowsとLinuxで作る「二刀流」AI開発環境

この記事の要点は、WSL2を用いてWindowsの快適な操作性とLinuxの強力な開発環境を両立させ、GPUパワーを最大限に引き出す手順です。4つのステップで、あなたのPCを本格的なAI研究室へと変貌させましょう。

コンセプト:母屋と離れ
WindowsとLinuxの理想的な関係

この環境構築は、家づくりに例えられます。
母屋 (Windows): 論文執筆などで使い慣れた快適な空間。
発電所 (GPU): 家全体のパワーの源。
離れ (Linux on WSL2): AI開発用の本格的な研究室。

重要なのは、発電所(GPU)はまず母屋(Windows)に接続し、そこから離れ(Linux)へ電気を引く、という順番です。

成功のための最重要ポイント
ここを抑えれば大丈夫

NVIDIAドライバ選択:
必ず「Studioドライバ (SD)」を選びます。これはAI学習のような長時間の安定動作を目的とした「マラソンランナー」向けのドライバです。

`nvidia-smi` エラーが出たら:
`command not found`等のエラーは、大抵が単純な手順漏れです。落ち着いて以下を確認しましょう。
1. WindowsにStudioドライバは入れたか?
2. `wsl –update` を実行したか?
3. `wsl –shutdown` で再起動したか?

WSL2で構築する「二刀流」AI開発環境:手順サマリー

この記事は、Windowsの利便性Linuxの強力な開発環境を両立させ、GPU性能を最大限に活用するための手順を解説します。PCを本格的なAI研究室に変える、4つのステップが要点です。

  1. NVIDIAドライバのインストール (母屋の整備)
    • Windows側に、AI学習など長時間の安定動作に最適化された「Studioドライバ」をインストールし、PCを再起動します。
  2. WSL2とUbuntuの導入 (離れの建築)
    • PowerShellを管理者権限で開き、wsl –installコマンド一発でWSL2を有効化し、Ubuntuをインストール後、PCを再起動します。
    • 初回起動時にUbuntuのユーザー名とパスワードを設定します。
  3. WSLカーネルの更新 (特別配線)
    • 再度PowerShell(管理者)で wsl –update を実行し、GPU連携に必要な最新カーネルに更新します。
    • 更新適用のため wsl –shutdown を実行し、WSLシステムを再起動させます。
  4. 最終確認 (点灯式)
    • Ubuntuターミナルを開き、nvidia-smi を実行します。GPU情報の一覧が表示されれば、環境構築は成功です。
目次

Windowsで始める医療AI開発:WSL2とGPUで創る、最強のデュアル環境

前回の『計画編』で、私たちは壮大なAIラボを創るための、自分だけの「設計図」を手にしました。さあ、ここからはいよいよ実際の「建築工事」の始まりです。あなたのPCに魂を吹き込み、アイデアを形にするための強力な基盤を、一つひとつ丁寧に築き上げていきましょう。

この記事で私たちが目指すゴール、それはまさに「二刀流」とも言える理想の開発環境の実現です。つまり、

  • 論文執筆や資料作成で使い慣れた、Windowsの快適な操作性はそのままに、
  • AI研究の最前線で標準となっている、Linuxの強力な開発エコシステムを同時に手に入れる。
  • そして、その両方の世界から、一枚のNVIDIA GPUが持つ驚異的な計算能力を、自在に引き出す。

そんな夢のような環境を、あなたの手で創り上げること。これを実現する鍵となるのが、Microsoftが公式に提供するWSL2 (Windows Subsystem for Linux 2) という素晴らしい技術です。

WSL2を、私はよく「Windowsという家の『離れ』に、本格的なLinuxの部屋を増築する」ようなものだと説明しています。しかし、それは単なる物置のような部屋ではありません。母屋であるWindowsの書斎(Officeソフトなど)と自由に行き来できる渡り廊下があり、さらに、家全体に電気を供給する強力な発電機(GPU)のコンセントもちゃんと付いている、極めて高機能な「AI専用の研究室」なのです。これにより、論文のグラフはExcelで作り、その元となるAIの計算はLinuxで行う、といった極めて柔軟なワークスタイルが、たった1台のPCで可能になります。

今回の記事では、このWSL2環境でGPUを使えるようにするまでの一連のプロセスを、以下の4つのステップに沿って、ハンズオン形式で解説していきます。専門用語も出てきますが、一つひとつ「なぜそうするのか」という理由と共に説明していきますので、ご安心ください。焦らず、一歩ずつ、未来の研究室を完成させていきましょう。


ステップ1:最初の関門「NVIDIAドライバ」- WindowsにGPUの存在を教え込む

さて、ここからが実際のハンズオンです。建築工事の最初のステップは、何と言っても「インフラ整備」。私たちのAIラボにとって、その最も重要なインフラがGPUとOSを繋ぐ架け橋、「NVIDIAドライバ」です。

なぜWindowsに?― すべては「母屋」から始まる

ここで、多くの方が「AI開発はLinux(WSL2)でするのに、なぜWindowsにドライバを入れるの?」という疑問を抱くことでしょう。それは至極もっともな疑問です。

答えは、WSL2の仕組みそのものにあります。WSL2上のLinuxは、PCのハードウェアに直接触れているわけではありません。いわば、Windowsという「ホスト(主人)」の上で動く「ゲスト(客人)」のような存在です。ゲストであるLinuxがGPUという設備を使いたい時、まずホストであるWindowsに「この設備を使わせてください」とお願いする必要があります。もし、ホスト自身がその設備の存在や使い方を知らなければ、ゲストに貸し出すことなどできませんよね。

そのため、まずは大元のWindows OSが、搭載されているNVIDIA GPUを完全に認識し、その性能を100%引き出せる状態にしておく必要があるのです。まさに、前回お話しした「『離れ』に電気を引く前に、まず『母屋』の配電盤を整備する」というわけです。


ハンズオン:Studioドライバのダウンロードとインストール

それでは、実際にドライバをインストールしていきましょう。手順はとてもシンプルです。

1. NVIDIA公式ダウンロードページへ

まずは、以下のリンクからNVIDIAの公式ダウンロードページにアクセスします。ブックマークしておくと良いかもしれません。

NVIDIAドライバダウンロード

2. あなたのGPUに合ったドライバを検索

ページを開くと、お使いのGPUの情報を選択するドロップダウンメニューが表示されます。ご自身のPCに搭載されているGPUの仕様に合わせて、正確に選択してください。

  • 製品タイプ: 多くの個人向けワークステーションでは「NVIDIA RTX」または「GeForce」になります。
  • 製品シリーズ: ご自身のGPUに合わせて選択します (例: GeForce RTX 40 Series)。
  • 製品ファミリー: 具体的なGPUのモデル名を選択します (例: GeForce RTX 4080 SUPER)。
  • オペレーティングシステム: お使いのWindowsのバージョン (例: Windows 11) を選択します。
  • 言語: Japanese を選択します。

【最重要ポイント】ダウンロードタイプは「Studioドライバ (SD)」を選ぶ

ここで一つ、非常に重要な選択があります。「ダウンロードタイプ」では、「Game Ready ドライバ (GRD)」ではなく、「Studio ドライバ (SD)」を選んでください(4)。

なぜなら、両者は目的が全く異なるからです。

  • Game Ready ドライバ (GRD): 最新ゲームの瞬間的なパフォーマンスを最大化することに特化した、いわば「短距離走者向け」のチューニングです。
  • Studio ドライバ (SD): AIのモデル学習や3Dレンダリングなど、長時間にわたって安定した性能を維持することが求められるプロフェッショナルな用途向けです。こちらは「マラソンランナー向け」のチューニングと言えるでしょう。

私たちの目的は、何時間、時には何日もかかるモデルの学習を安定して行うこと。そのため、信頼性を最優先した「Studio ドライバ」が最適な選択となります。

すべての項目を選択したら、「探す」ボタンをクリックします。

3. ダウンロードとインストール

検索結果に表示された最新のドライバを「ダウンロード」ボタンからダウンロードします。数十秒から数分で、.exe形式のインストーラファイルがダウンロードされるはずです。

ダウンロードが完了したら、そのファイルをダブルクリックしてインストーラを起動してください。あとはインストーラの指示に従って進めていくだけです。

  • インストールオプションの選択: 「NVIDIAグラフィックスドライバーとGeForce Experience」が選択された状態でOKです。
  • インストールの種類: 特にこだわりがなければ、「高速(推奨)」を選択すれば、最適な設定でクリーンにインストールしてくれます。

インストールプロセスが完了すると、PCの再起動を促されます。ここは必ず指示に従い、一度PCを再起動してください。

お疲れ様でした!これで、WindowsがあなたのGPUという強力な相棒と、しっかりと握手を交わした状態になりました。次のステップに進むための、最も重要な準備が整ったのです。

ステップ2: WSL2の有効化とUbuntuの導入 – Windowsの中にLinux環境を手に入れる

「母屋」であるWindowsの電気工事(NVIDIAドライバの導入)が無事に完了しましたね。次はいよいよ、この家の敷地内に、私たちの活動拠点となる「離れの研究室(Linux環境)」を建築します。これを驚くほどシンプル、かつパワフルに実現してくれるのが、MicrosoftのWSL2 (Windows Subsystem for Linux 2)です。

PowerShell (管理者)
※これはシミュレーションです。実際のコマンドは実行されません。
▶ 実行用の安全なコマンド一覧(コピー&ペースト用)

Windows (PowerShell管理者権限)

以下のコマンドを実行するだけで、WSL2の有効化とUbuntuの最新LTS版が自動的にインストールされます。

# 1. WSLとUbuntuをまとめてインストール wsl –install # 2. (任意) 特定バージョンのUbuntuをインストールしたい場合 wsl –install -d Ubuntu-22.04

Ubuntu (初回起動時)

再起動後にUbuntuのターミナルが起動したら、指示に従ってユーザー名とパスワードを設定します。パスワードは画面に表示されませんが、正しく入力されています。

# 1. 新しいUNIXユーザー名を入力 (例: my-developer) # 2. 新しいパスワードを入力 (画面には表示されない) # 3. パスワードを再入力して確認

ハンズオン:コマンド一発でLinux環境を構築

昔はこの作業、いくつかの機能を有効にしたり、設定画面を何度も開いたりと、少し手間がかかるものでした。しかし、現在のWindows 10や11では、まるで魔法のように、たった一つのコマンドで全ての準備が整います(5)。さあ、やってみましょう。

1. 「管理者の書斎」を開く (PowerShellの起動)

まず、Windowsに対して「これからシステムに関わる重要な変更を加えますよ」という許可を得るため、PowerShellを「管理者」権限で開きます。これは、家の重要な設計変更を行う際に、家主(管理者)としてサインをするようなイメージです。

Windowsのスタートメニューアイコンを右クリックし、表示されたメニューから「ターミナル (管理者)」または「Windows PowerShell (管理者)」を選択してください。ユーザーアカウント制御のポップアップが表示されたら「はい」をクリックします。すると、これからコマンドを打ち込んでいく、青または黒のウィンドウが立ち上がります。

2. すべてを解決する「魔法の呪文」 (wsl –install)

準備が整ったら、以下のコマンドをコピーしてPowerShellのウィンドウに貼り付け(右クリックで貼り付けできます)、Enterキーを押してください。たったこれだけです。


# WSL (Windows Subsystem for Linux) のインストールと有効化、
# およびデフォルトのLinuxディストリビューション (Ubuntu) のインストールをまとめて実行します。
wsl --install

この一行のコマンドが、裏側では以下の3つの重要な処理を自動的に実行してくれています。

  1. 「WSL機能」の有効化: WindowsがLinuxと対話するための基本的な機能をONにします。
  2. 「仮想マシン プラットフォーム」の有効化: WSL2の心臓部である、軽量な仮想化技術をONにします。
  3. 「Ubuntu」のダウンロードとインストール: Microsoft Storeから、AI開発で最も標準的なLinuxディストリビューションであるUbuntuの最新LTS版をダウンロードし、インストールします。

【Pro-Tip】LTS版とは?バージョンを指定する方法

コマンドが自動でインストールしてくれるのはLTS (Long-Term Support)版のUbuntuです。これは、5年間の長期的なセキュリティアップデートが保証された、非常に安定しているバージョンで、研究開発用途には最適です。もし特定のプロジェクトで古いバージョンが必要な場合は、wsl --install -d Ubuntu-22.04 のように、-dオプションでディストリビューション名を指定することもできます。

3. システムを馴染ませるための再起動

コマンドの実行が完了すると、PCの再起動を促されます。これは、Windowsの根幹に関わる重要な変更をシステムに完全に認識させるための、大切なプロセスです。必ずメッセージに従い、PCを再起動してください。

4. 「研究室」への最初の入室と鍵の設定 (Ubuntuの初期設定)

再起動後、ようこそ、あなたの新しい研究室へ! Ubuntuのセットアップウィンドウが自動的に起動するはずです(もし起動しない場合は、スタートメニューから「Ubuntu」を探してクリックしてください)。

最初の入室時には、この研究室の「主」として、あなたのユーザー名パスワードを設定します。

  • ユーザー名 (Enter new UNIX username): 半角英数字の小文字で、覚えやすい名前を付けましょう(例: my-user, lab-adminなど)。
  • パスワード (New password / Retype new password): セキュリティのため、入力しても画面にはアスタリスク(*)すら表示されません。これは故障ではなく、Linux世界の標準的な作法です。ATMで暗証番号を入力する時、周りの人に見えないようになっているのと同じですね。慌てず、正確に2回入力してください。

ここで設定するパスワードは、今後、研究室に新しい機材(ソフトウェア)を導入する際などに使うsudo(Super-User Do)コマンドの実行に必要となる、いわば「マスターキー」です。非常に重要ですので、絶対に忘れない、かつ安全なものを設定しましょう。


ユーザー名とパスワードの設定が終わると、見慣れたコマンドプロンプト(ユーザー名@PC名:~$ のような表示)が現れます。これで、あなたのWindowsの中に、Ubuntuという独立した、本格的なLinux環境が完全に構築されました。おめでとうございます!


ステップ3:GPUへの道を繋ぐ「特別配線」- WSLカーネルの更新

さて、「母屋」であるWindowsの準備は万端、「離れ」であるUbuntuの研究室も建ちました。残るは、この両者を繋ぎ、母屋の強力な発電機(GPU)の電力を離れでも使えるようにする、最後の「特別配線」工事です。このステップは驚くほど簡単ですが、GPUを動かすためには絶対に欠かせない、画竜点睛とも言える工程です。

PowerShell (管理者)
※これはシミュレーションです。実際のコマンドは実行されません。
▶ 実行用の安全なコマンド一覧(コピー&ペースト用)

Windows (PowerShell管理者権限)

以下の2つのコマンドを順番に実行し、WSLを最新の状態に保ちます。

# 1. WSLのカーネルとコンポーネントを最新版に更新 wsl –update # 2. (推奨) 更新を適用するためにWSLシステムを再起動 wsl –shutdown

Ubuntu

wsl --shutdown の後、スタートメニューから「Ubuntu」を再度起動するだけで、更新されたシステムが利用可能になります。

なぜ更新が必要? – 最新の「設計図」を手に入れる

私たちが先ほどインストールしたWSL2は、いわば「標準モデル」です。しかし、Microsoftは日々WSL2の改良を続けており、より新しい機能や最適化されたバージョンをリリースしています。私たちが欲しいGPUとの橋渡し機能は、まさにその改良によって提供される機能の一つなのです。

スマートフォンのOSをアップデートすると新しい絵文字や機能が使えるようになるのと似ていますね。wsl --updateというコマンドは、Microsoftのサーバーに最新の「設計図」がないか問い合わせ、もしあればそれをダウンロードして、私たちのWSL2を最新鋭のバージョンにアップグレードしてくれるのです。

ハンズオン:2つのコマンドで完了する最終調整

この最終調整も、PowerShellを使って行います。さあ、あともう一息です。

1. WSLコンポーネントを最新化する (wsl –update)

まずは、ステップ2と同様に、Windows PowerShellを「管理者」権限で開いてください。そして、以下のコマンドを入力して実行します。


# WSL の Linux カーネルや関連コンポーネントを
# Microsoft のサーバーからダウンロードし、最新バージョンに更新します。
wsl --update

これを実行すると、WSLは自動的に更新プログラムの有無を確認し、もしあればダウンロードとインストールを行ってくれます。「カーネルは最新バージョンです」といったメッセージが表示されれば、すでに最新の状態なので問題ありません。

2. (推奨) クリーンな再起動 (wsl –shutdown)

ソフトウェアのアップデート後は、一度きれいに再起動するのが安定動作の秘訣です。これはPC本体の再起動とは少し違い、WSLシステムだけを再起動するためのコマンドです。


# 現在実行中のすべてのLinuxディストリビューションと
# WSL2仮想マシンを安全にシャットダウンします。
wsl --shutdown

このコマンドを実行すると、バックグラウンドで動いていたWSLが完全に停止します。そのあと、Windowsのスタートメニューを開き、そこに新しく作られた「Ubuntu」のアイコンをクリックして起動してください。今度はまっさらな、そして最新のカーネルであなたの研究室が立ち上がってきます。


これで、物理的にも、ソフトウェア的にも、GPUと私たちのUbuntu研究室を繋ぐ全ての配線工事が完了しました。次はいよいよ、緊張と興奮の瞬間。正しく電気が通っているかを確認する、最終ステップに進みましょう。

ステップ4:いざ点灯!- nvidia-smiで最終確認

お疲れ様でした。基礎工事が終わり、研究室が建ち、特別な配線も繋がりました。いよいよ、私たちの新しいAIラボのメイン電源にスイッチを入れる、緊張と興奮の瞬間です。これまでの全ての作業が正しく行われていれば、Ubuntuの中からGPUの存在がはっきりと見えるはずです。

Ubuntu
※これはシミュレーションです。実際のコマンドは実行されません。
▶ 実行用の安全なコマンド一覧(コピー&ペースト用)

Ubuntu

すべての設定が完了した後、Ubuntuターミナル内で以下のコマンドを実行し、GPUが正しく認識されているかを確認します。

# GPUの状態とドライバ情報を表示 nvidia-smi

もしエラーが出る場合は、前のステップに戻り、Windows側でのNVIDIAドライバのインストール、およびPowerShellでの wsl --update, wsl --shutdown が正しく完了しているかを確認してください。

ハンズオン:確認はコマンド一発

確認作業は、信じられないほど簡単です。さあ、やってみましょう。

  1. スタートメニューから「Ubuntu」を起動します。
    見慣れた黒いターミナル画面が、あなたの指示を待っています。
  2. 以下のコマンドを入力し、Enterキーを押してください。

この nvidia-smi は、NVIDIA System Management Interface の略で、NVIDIAドライバに対して「もしもし、元気ですか?あなたの状態を教えてください」と直接問い合わせるためのコマンドです。


# NVIDIA System Management Interface (nvidia-smi) コマンドを実行し、
# GPUの現在の状態(ドライババージョン、温度、メモリ使用量など)を表示します。
nvidia-smi

成功の証:この画面がすべてを物語る

Enterキーを押した後、以下のような表が表示されたら… おめでとうございます!大成功です! 🎉

これは、あなたの「離れの研究室(Ubuntu)」が、「母屋の発電機(GPU)」から正しく電力を受け取っている、何よりの証拠です。Windowsの快適さとLinuxのパワー、そしてNVIDIA GPUの計算能力が、今まさにあなたの手の中で一つになりました。


+-----------------------------------------------------------------------------+
| NVIDIA-SMI 525.85.05    Driver Version: 525.85.05    CUDA Version: 12.0     |
|-------------------------------+----------------------+----------------------+
| GPU  Name        Persistence-M| Bus-Id        Disp.A | Volatile Uncorr. ECC |
| Fan  Temp  Perf  Pwr:Usage/Cap|         Memory-Usage | GPU-Util  Compute M. |
|                               |                      |               MIG M. |
|===============================+======================+======================|
|   0  NVIDIA GeForce ...  Off  | 00000000:01:00.0 Off |                  N/A |
| 30%   35C    P8    25W / 350W |      2MiB / 24576MiB |      0%      Default |
|                               |                      |                  N/A |
+-------------------------------+----------------------+----------------------+

この表から、GPUの名前(NVIDIA GeForce …)、ドライバのバージョン、そしてVRAMの使用状況(2MiB / 24576MiB など)といった、GPUに関する詳細な情報を読み取ることができます。

もし動かなかったら?- 落ち着いて確認する3つのこと

もし、nvidia-smi: command not found という無情なメッセージが表示されても、決して慌てないでください。ほとんどの場合、これまでのステップのどこかに小さな見落としがあるだけです。以下の3つの点を確認してみましょう。✅ 1. 「母屋」の電気はOK? (ステップ1の確認) Windows側にNVIDIA Studio ドライバは正しくインストールされていますか? インストール後、PCはきちんと再起動しましたか?
✅ 2. 「配線工事」は完了した? (ステップ3の確認) PowerShell(管理者)で wsl --update コマンドは正常に実行できましたか?
✅ 3. 困った時の「伝家の宝刀」 何はともあれ、一度PC全体を再起動してみましょう。多くのITの問題は、不思議と再起動で解決することがあります。これは最も簡単で、そして最も効果的なトラブルシューティングの一つです。


まとめと次のステップへ

これで、私たちのAIラボの「建築工事」はすべて完了です。Windowsという快適なOSの上に、GPUのパワーをフルに活用できる本格的なLinux環境が整いました。

次の記事「E0.1.3: Python + PyTorch(GPU) 環境構築」では、いよいよこの真新しい研究室に、実験道具(Python)や分析機器(PyTorch)を搬入し、最初のAI実験(モデルの実行)を行う準備を始めます。ぜひ、この勢いのまま次のステップへ進んで、AI開発の核心に触れてみましょう!


まとめと次のステップ

お疲れ様でした!今回の記事では、Windows PC上に、WSL2を用いてGPUが利用可能なUbuntu環境を構築しました。これで、医療AI開発を行うための強固な「土台」が完成したことになります。

次の記事「E0.1.3: Python + PyTorch(GPU) 環境構築」では、いよいよこの土台の上に、AIモデルを開発するための「研究室」そのものを建てていきます。PythonやPyTorchといったツールを導入し、研究の再現性を高めるための「仮想環境」というプロフェッショナルな作法を学びます。ぜひ、このまま続けて挑戦してみてください。


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医療者の能力拡張とデータ駆動型医療への航海を後押しします。


引用文献

  1. NVIDIA Corporation. NVIDIA Studio Drivers Provide the Best Experience for Creative Apps. [Online]. Available: https://www.nvidia.com/en-us/geforce/news/nvidia-studio-drivers/
  2. Microsoft Corporation. Install WSL. [Online]. Available: https://learn.microsoft.com/en-us/windows/wsl/install

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この記事を書いた人

医師・医学博士・AI研究者・連続起業家
元厚生労働省幹部・ハーバード大学理学修士・ケンブリッジ大学MBA・コロンビア大学行政修士(経済)
岡山大学医学部卒業後、内科・地域医療に従事。厚生労働省で複数室長(医療情報・救急災害・国際展開等)を歴任し、内閣官房・内閣府・文部科学省でも医療政策に携わる。
退官後は、日本大手IT企業や英国VCで新規事業開発・投資を担当し、複数の医療スタートアップを創業。現在は医療AI・デジタル医療機器の開発に取り組むとともに、東京都港区で内科クリニックを開業。
複数大学で教授として教育・研究活動に従事し、医療関係者向け医療AIラボ「Medical AI Nexus」、医療メディア「The Health Choice | 健康の選択」を主宰。
ケンブリッジ大学Associate・社会医学系指導医・専門医・The Royal Society of Medicine Fellow

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