[Medical AI with Python: P67] Vision Transformer (ViT) — Transformerアーキテクチャを画像認識に応用する新時代のモデルを学ぶ

目次

TL; DR (要約)

「もしAIが、画像を文章として読んだら?」という革命的な発想から生まれたVision Transformer (ViT)
自然言語処理の王者Transformerを画像認識に応用した、次世代AIの要点です。

① 発想の転換
(画像を文章に見立てる)

画像をジグソーパズルのようにパッチに分割し、各パッチを「単語」と見なします。この「単語の列」をTransformerに入力します。

② CNNとの違い
(大局的な視点)

局所から見るCNNと異なり、ViTは画像全体のパッチ間の関連性を一度に計算。グローバルな文脈理解に優れますが、学習には膨大なデータが必要です。

③ 実践的な使い方
(転移学習)

ゼロから学習させるのは困難。ImageNet等で事前学習済みのモデルを読み込み、自分のタスクに合わせて再調整(ファインチューニング)するのが基本です。

この章の学習目標と前提知識

この章の学習目標 前提となる知識
  • Vision Transformer (ViT) の核心的なアイデアである「画像をパッチの系列として扱う」方法を理解する。
  • ViTの入力プロセスの主要なステップ(パッチ化、線形射影、[CLS]トークン、位置エンコーディング)を説明できるようになる。
  • ViTのSelf-Attentionが、なぜグローバルな文脈理解に優れているのかを、CNNと比較して学ぶ。
  • CNNとViTの思想的な違い(帰納的バイアス)と、それに伴うデータ効率の違いを理解する。
  • PyTorchを使って事前学習済みのViTモデルを読み込み、簡単な推論を実行する方法を知る。
  • Transformerの基本知識
    Self-AttentionやEncoderの役割など、言語モデルとしてのTransformerの基本的な仕組みを理解していること(第22回の内容)。
  • CNNの基本的な役割
    CNNが画像認識の代表的なモデルであること、局所的な特徴を捉えるという基本的な役割を理解していること(第14回の内容)。
  • (推奨) PythonとPyTorchの基礎知識
    コード例の理解を深めるために役立ちますが、必須ではありません。本記事は概念の理解を主眼としています。

はじめに:もしAIが、画像を「文章」として読んだなら?

皆さん、こんにちは!いよいよ「拡張編」も、AIのアーキテクチャを語る上で避けては通れない、大きな転換点とも言えるモデルの登場です。

これまでの私たちの旅を振り返ってみると、二つの巨大な「王国」を訪れたようなものでした。一つは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が支配する、揺るぎない「画像認識の王国」。そしてもう一つは、Transformerが君臨し、言語の複雑な文脈を読み解く「自然言語処理の王国」です。この二つの王国は、それぞれ異なる文化(設計思想)を持ち、お互いに干渉することなく、それぞれの領域で発展を遂げているように見えました。

しかし、2020年、Googleの研究者たちが発表した一つの論文(1)が、この二つの王国の間に、巨大な橋を架けることになります。彼らは、こう考えたのです。

「一枚の絵は、千の言葉に値する(An image is worth a thousand words)」と言う。ならば、画像を『単語の集まり』として、Transformerに読ませてみたらどうだろうか?

この、常識を覆す大胆な発想から生まれたのが、今回学ぶVision Transformer (ViT) です。ViTは、自然言語処理のために生まれたTransformerの強力なアーキテクチャを、ほとんどそのままの形で画像認識のタスクに適用するという、まさに「パラダイムシフト」を体現したモデルなのです。

この記事では、画像認識の世界に新たな地平を切り拓いたViTについて、「なぜそんなことが可能なのか?」という基本的な考え方から、CNNとの決定的な違い、そしてPyTorchを使って事前学習済みモデルをどう活用するのかまで、その全体像をダイジェスト形式で一緒に探求していきましょう。

なお、各セクションのより詳細な理論や具体的な実装については、今後の個別の記事(26.1〜26.4)で、一つ一つじっくりと深く掘り下げていく予定ですので、今回はまず「全体像を掴むこと」を目標にしてくださいね。

26.1 ViTの基本構造 — 画像を「単語の列」として扱う

ViTの最も革新的で、そして驚くほどシンプルなアイデアは、CNNがこれまで得意としてきた画像の2Dグリッド構造を一度忘れ、画像を、あたかも「単語(トークン)が並んだ一文」のように扱うことです。では、その驚くべき「翻訳」のプロセスを、ステップバイステップで見ていきましょう。

ステップ1:画像をパッチに分割する (ジグソーパズル化)

最初のステップは、入力画像を、重なりのない小さな正方形のパッチ (Patches) に分割することです。これは、一枚の風景写真を、たくさんのピースからなるジグソーパズルに分解する作業によく似ています。

例えば、224×224ピクセルの画像があったとして、もしパッチサイズを16×16に設定すると、画像は \((224/16) \times (224/16) = 14 \times 14 = 196\)個のパッチに分割されることになります。

ステップ2:各パッチをベクトルに変換する (パッチの「単語」化)

次に、切り分けられた各パッチ(まだ2Dのピクセルデータです)を、Transformerが理解できる「単語」、すなわち一次元のベクトルに変換します。これは、大きく2つの工程で行われます。

  1. 平坦化 (Flattening): まず、16×16ピクセルの各パッチを、ピクセル値を横一列に並べた、一本の長いベクトルにします。カラー画像(RGBの3チャンネル)であれば、このベクトルの長さは \(16 \times 16 \times 3 = 768\) となります。
  2. 線形射影 (Linear Projection): そして、この平坦化されたベクトルを、線形層(全結合層)に通します。これにより、各パッチは、Transformerモデルが扱う固定の次元数(例えば768次元)を持つ「トークン埋め込み」ベクトルへと変換されます。

このステップによって、私たちの画像は、196個の「単語(ベクトル)」が並んだ「文章」になりました。

ステップ3:位置情報と分類トークンを付与する (文脈の準備)

しかし、ただパッチを並べただけでは、「どのパッチが画像のどの位置にあったか」という、非常に重要な空間情報が失われてしまいます。文章で言えば、単語の順番がバラバラになってしまうのと同じです。そこで、ViTはさらに二つの工夫を凝らします。

  • 位置エンコーディング (Positional Encoding): 各パッチのベクトルに、その「位置情報」を示す特別なベクトルを足し合わせます。これにより、Transformerは「このパッチは左上にある」「こっちは中央だ」ということを認識できるようになります。
  • 分類用トークン [CLS]: 系列の先頭に、特別な分類用トークン [CLS] (Classification Token) を一つ追加します。これは、BERT(2)から借用したアイデアで、この[CLS]トークンは、最終的にTransformer Encoderを通過した後、画像全体の情報を集約した「代表ベクトル」として機能します。そして、この[CLS]トークンに対応する最終的な出力を使って、画像全体のクラス分類(例えば「これは肺炎の画像だ」)を行うのです。

ViTへの入力プロセスの概念図

Vision Transformer (ViT) の入力プロセス 1. パッチに分割 元の入力画像 (例: 224x224x3) 1 2 196個のパッチに分割 (各パッチ: 16x16x3) 2. 平坦化 & 線形変換 パッチ 平坦化 線形変換 768次元ベクトル 196個のベクトルシーケンスが生成される 1 2 196 3. [CLS]トークンと位置エンコーディングを追加 [CLS] トークン + 位置 0 パッチベクトル 1 + 位置 1 パッチベクトル 196 + 位置 196 Transformer Encoder への最終的な入力シーケンス (197 トークン)

どうでしょうか。一枚の2D画像が、見事にTransformerが最も得意とする「トークンの系列データ」へと変換されましたよね。この、ドメイン(画像)の知識をほとんど仮定せず、どんなデータも「系列」として扱ってしまうという大胆な発想こそが、ViTの強力さと汎用性の源泉なのです。この後は、この系列データを、私たちが第22回で学んだTransformer Encoderにそのまま入力するだけです。

26.2 Transformer Encoderの魔法:パッチ同士の「対話」で全体像を掴む

さて、ViTが画像を「パッチという単語が並んだ文章」に翻訳するところまで見ましたね。ここから先は、まさに私たちが第22回でじっくり学んだ、自然言語処理のためのTransformer Encoderが、その真価を発揮する舞台となります。入力が文章から画像のパッチに変わっただけで、中で行われている計算の仕組みは驚くほど同じなんです。

その心臓部であり、TransformerをTransformerたらしめている機構、Self-Attentionが、ここでも主役を演じます。

Self-Attention:画像パッチたちの「円卓会議」

Self-Attentionの働きは、画像内の全パッチが一堂に会して開く「円卓会議」のようなものだと想像してみてください。

各パッチ(会議の出席者)は、会議が始まると、三つの役割を同時にこなします。

  1. クエリ (Query): まず、「私はこんな特徴を持っていますが、私と関連が深いのはどのパッチですか?」と、他の全員に問いかけ(Queryを発行)します。
  2. キー (Key): 次に、他のパッチからの問いかけに応えるために、「私はこんな特徴を持っていますよ」という、自分自身の名札(Key)を提示します。
  3. バリュー (Value): そして、自分自身が持っている「本来の情報」(Value)も用意しておきます。

各パッチは、自分の「問い(Query)」と、他の全パッチの「名札(Key)」を照らし合わせ、関連性の強さ(Attentionスコア)を計算します。そして、その関連性が強いパッチの「情報(Value)」を、より重点的に取り込むことで、自分自身の表現を更新していくのです。

Self-Attention: ある一つのパッチの視点

Self-Attention: 一つのトークン(パッチ)の視点 1. Query, Key, Value を生成 パッチ5 (犬の左耳) Query (Q) 「関連するのは誰?」 Key (K) 「僕は耳だよ」 Value (V) 「耳の情報」 2. 全てのKeyと関連度を計算 Q5 関連度計算 Q・KT (内積 + Softmax) K1 K6 (鼻) 結果: K6 (鼻) との関連度が非常に高い! 3. 関連度でValueを重み付けして集約 Attention Weights V1 V6 (鼻) Σ × 4. トークンの表現を更新 新しいパッチ5の表現 「鼻」の情報を反映した、より文脈的な「耳」

CNNとの根本的な違い:「局所」から「大局」へ

この仕組みが、CNNとは根本的に異なります。

  • CNN (畳み込みニューラルネットワーク) CNNは、小さなフィルタ(カーネル)を使って、画像の局所的な特徴(例えば、すぐ隣のピクセルとの関係)から学習を始めます。そして、層を重ねることで、徐々に視野を広げ、大きな特徴を捉えていきます。いわば、視野の狭い顕微鏡で、少しずつ全体像を把握していくようなアプローチです。
  • ViT (Vision Transformer) 一方、ViTのSelf-Attentionは、最初の層から、画像内のどんなに離れたパッチ同士でも、直接関係性を計算できます。「左上のパッチ」と「右下のパッチ」が、もし意味的に関連が深ければ、一回の計算でその繋がりを見つけ出すことができるのです。これは、最初から画像全体を俯瞰する「鳥の目」を持っているようなもので、グローバルな文脈理解において非常に強力です。

この「鳥の目」を持つSelf-Attention機構こそが、ViTが時にCNNを凌駕する性能を発揮する、大きな秘密の一つなんですね。

26.3 CNNとの比較から見るViTの光と影

ViTの登場は、画像認識の「王国」に君臨していたCNNに、強力な挑戦者が現れたことを意味します。この二つのアーキテクチャは、画像という同じ対象を扱いながら、その「見方」が全く異なります。どちらが優れている、という単純な話ではなく、それぞれの得意なこと、苦手なことを理解し、私たちの目的に合わせて適切に選択することが、AI開発者として非常に重要になります。

ここでは、両者の思想的な違いを、いくつかの重要な観点から比較してみましょう。

思想の違い①:帰納的バイアスという「思い込み」

両者の最も根本的な違いは、帰納的バイアス (Inductive Bias) という、モデルが持つ「事前知識」や「思い込み」の強さにあります。

  • CNNの帰納的バイアス(強い) CNNは、「画像というものは、近くにあるピクセル同士が強い関係を持つはずだ(局所性)」そして「画像の中でオブジェクトが少し移動しても、それは同じオブジェクトのはずだ(並進不変性)」という、画像に関する非常に強力な「思い込み」を、その構造自体に組み込んでいます。これは、人間が物を見るときに自然に行っていることと似ており、この強いバイアスのおかげで、CNNは比較的少量のデータからでも、効率的に画像の特徴を学習できます。
  • ViTの帰納的バイアス(弱い) 一方、ViTは、このような画像特有の「思い込み」をほとんど持ちません。「入力は、ただのトークンの列である」という、非常に一般的な仮定しか置いていません。そのため、ViTはデータから「画像とは何か」という根本的なルールを、ゼロから自力で学ばなければなりません。

思想の違い②:グローバルな文脈理解

この帰納的バイアスの違いは、モデルが画像の「全体像」をどう捉えるかに直結します。

  • CNN:「局所」から「大局」へ
    CNNは、視野の狭い顕微鏡で覗くように、まず画像の小さな領域から特徴を抽出し、層を重ねることで、その視野を徐々に広げていき、最終的に画像全体の意味を理解します。
  • ViT:「大局」から「大局」へ
    ViTのSelf-Attentionは、鳥の目のように、最初から画像全体を俯瞰します。どんなに離れた場所にあるパッチ同士でも、意味的に関連があれば、最初の層からその関係性を見つけ出すことができます。この能力は、画像全体の構成や、離れた部分の関係性が重要なタスク(例えば、広範囲に広がるびまん性の疾患パターンの認識など)において、特に強力な武器となり得ます。

比較表:CNN vs ViT

これらの思想の違いが、両者の性格を決定づけています。以下の表で、その特徴を整理してみましょう。

観点CNN (例: ResNet)Vision Transformer (ViT)
帰納的バイアス強い(局所性など画像特有の事前知識を持つ)弱い(一般的な系列データとして扱い、データから学ぶ)
データ効率比較的小さなデータセットでも良好に学習可能性能を最大限に引き出すには、膨大なデータセットが必要
グローバルな文脈理解層を重ねることで徐々に獲得初期の層から画像全体の関連性を捉えることが可能

医療分野での示唆と使い分け

では、私たち医療分野の研究者は、この二つのモデルをどう使い分ければ良いのでしょうか?答えは、私たちが利用できる「データの量」にあります。

  • データが少ない場合(数千〜数万枚レベル): 画像に関する有益な「思い込み」を持つCNNの方が、効率的に学習でき、良い性能を発揮することが多いです。あるいは、次にご紹介する「事前学習済みViT」の活用が現実的な戦略となります。
  • データが非常に多い場合(数十万枚以上): ViTは、「思い込み」に縛られない分、膨大なデータからCNNでは捉えきれなかった、より本質的で複雑なパターンを学習できる可能性があり、CNNの性能を凌駕することが報告されています(2)。特に、全スライド画像(WSI)のような巨大な病理画像データセットを用いた研究などで、そのポテンシャルが注目されています。

つまり、ViTは「ビッグデータ時代の申し子」とも言えるかもしれませんね。その性能を最大限に引き出すには、相応のデータ量が必要になる、という点は、私たちがモデルを選択する上で、常に頭に入れておくべき重要なポイントです。

26.4 PyTorch torchvision を用いた事前学習済みViTの活用 〜巨人の肩に乗り、最先端の視力を手に入れる〜

さて、ViTが非常に強力なアーキテクチャであることは分かりましたが、同時に、その性能を引き出すには膨大なデータセットでの事前学習が必要、という課題も浮かび上がりました。「結局、Googleのような巨大IT企業でなければ、ViTの恩恵は受けられないのか…」と、少しがっかりされたかもしれませんね。

でも、ご安心ください。幸いなことに、私たちはその「巨人」が、途方もない計算コストをかけて育て上げた事前学習済みモデルの「賢い脳(重み)」を、いとも簡単に利用することができるのです。これが、転移学習 (Transfer Learning) という、現代のAI開発において最も重要で、最もコストパフォーマンスの高いアプローチです。

PyTorchの公式ライブラリであるtorchvision.modelsには、ImageNetという100万枚以上の画像データセットで事前学習済みのViTモデルが用意されており、私たちはその「賢い初期状態」を、たった数行のコードで呼び出すことができます。さっそく、その力を体験してみましょう。

Pythonコード例:事前学習済みViTで画像分類を試す

ここでは、学習済みのViTモデルを読み込み、サンプル画像に対して推論を行う基本的な流れを、一つの連続したコードとして示します。全体のプロセスを、コード内のコメントでステップごとに解説していきます。

graph TD
    A["開始"] --> B["1. 推論環境の準備
(ViTモデル、前処理ルール、クラスラベルをロード)"]; B --> C["2. 分類対象の画像を取得
(Webからサンプル画像をダウンロード)"]; C --> D["3. 画像をモデルで分類(推論)
(画像を前処理し、モデルに入力して結果を得る)"]; D --> E["4. 結果を解釈して表示
(分類結果を確率に変換し、上位の予測を表示)"]; E --> F["終了"];
# --- ステップ1. 必要なライブラリをインポート ---
import torch
import torchvision.models as models
from torchvision import transforms
from PIL import Image # Pythonで画像を扱うための標準的なライブラリ
import requests       # Web上のリソースにアクセスするためのライブラリ
import io             # バイトデータをメモリ上でファイルのように扱うためのライブラリ

# --- ステップ2. 事前学習済みのViTモデルを読み込む ---
print("--- 事前学習済みViTモデルを読み込み中... ---")
# torchvision.modelsから、事前学習済みのViT-Base/16モデルを読み込みます。
# weights=... に事前学習済みの重みを指定することで、学習済みの状態でモデルが手に入ります。
model = models.vit_b_16(weights=models.ViT_B_16_Weights.IMAGENET1K_V1)
# モデルを推論モードに切り替えます。これは、Dropoutなどをオフにするための重要なおまじないです。
model.eval()
print("--- モデルの準備完了 ---")


# --- ステップ3. 画像の前処理パイプラインを定義 ---
# ViTの事前学習時に使われたのと同じ方法で、新しい画像を前処理する必要があります。
# transforms.Composeで、一連の前処理をレシピのように定義します。
preprocess = transforms.Compose([
    transforms.Resize(256),      # まず、画像サイズを256x256にリサイズします。
    transforms.CenterCrop(224),  # 次に、画像の中央224x224を切り出します。
    transforms.ToTensor(),       # 画像をPyTorchのテンソル形式に変換します。
    transforms.Normalize(        # 最後に、ImageNetの学習時に使われた平均と標準偏差で正規化します。
        mean=[0.485, 0.456, 0.406],
        std=[0.229, 0.224, 0.225]
    ),
])

# --- ステップ4. ImageNetラベルを事前に読み込み ---
print("--- ImageNetクラスラベルを読み込み中... ---")
try:
    # ImageNetの1000クラスのラベルが記載されたテキストファイルのURL
    label_url = "https://raw.githubusercontent.com/pytorch/hub/main/imagenet_classes.txt"
    # URLにアクセスしてレスポンスを取得します。
    response = requests.get(label_url)
    # HTTPリクエストが成功したか(ステータスコード200番台)をチェックします。失敗ならエラーを発生させます。
    response.raise_for_status() 
    # 全体の前後の空白を削除し、改行で分割後、各行の空白も削除し、空の行は無視します。より頑健な方法です。
    labels = [line.strip() for line in response.text.strip().split('\n') if line.strip()]
    print(f"--- ラベル読み込み完了: {len(labels)}クラス ---")
    
    # 念のため、読み込んだラベルが期待通り1000個であるかを確認し、異なる場合は警告を出します。
    if len(labels) != 1000:
        print(f"警告: ラベル数が{len(labels)}です(期待値: 1000)")
        
except Exception as e:
    # もし上記tryブロック内で何らかのエラーが発生した場合に、この処理が実行されます。
    print(f"ラベルの読み込みに失敗: {e}")
    # フォールバックとして、番号付きの汎用的なラベルリストを生成します。
    labels = [f"クラス_{i:03d}" for i in range(1000)]
    print("--- フォールバックラベルを使用 ---")

# --- ステップ5. サンプル画像を準備 ---
url = "https://images.dog.ceo/breeds/hound-afghan/n02088094_1003.jpg"
print(f"\n--- サンプル画像をダウンロードしています: {url} ---")
try:
    # requestsで画像データを取得します。
    response = requests.get(url, stream=True)
    # 通信が成功したかチェックします。
    response.raise_for_status()
    # 取得した画像データをPIL.Imageで開きます。
    # 画像が白黒(L)や透過(RGBA)の場合を考慮し、確実に3チャンネルのRGB形式に変換します。
    input_image = Image.open(response.raw).convert('RGB')
    print("--- 画像の準備完了 ---")
except Exception as e:
    # 画像のダウンロードや読み込みに失敗した場合の処理です。
    print(f"画像の読み込みに失敗しました: {e}")
    input_image = None

# --- ステップ6. 画像を前処理し、モデルで推論を実行 ---
# 画像が正常に読み込めた場合のみ、以下の処理を実行します。
if input_image:
    # ステップ3で定義した前処理パイプラインを適用します。
    input_tensor = preprocess(input_image)
    # モデルはミニバッチ単位でデータを処理するため、1枚の画像に「バッチの次元」を追加します。
    # [3, 224, 224] -> [1, 3, 224, 224]
    input_batch = input_tensor.unsqueeze(0)
    
    # 勾配計算をオフにして(計算を効率化)、推論を実行します。
    with torch.no_grad():
        # モデルにバッチ化されたテンソルを入力し、出力を得ます。
        output = model(input_batch)
        print("--- モデルによる推論完了 ---")
    
    # --- ステップ7. 結果を解釈して表示 ---
    # モデルの出力スコア(ロジット)を、Softmax関数を使って「確率」に変換します。
    probabilities = torch.nn.functional.softmax(output[0], dim=0)
    
    # Top5の予測結果(確率とクラスID)を取得します。
    top5_prob, top5_catid = torch.topk(probabilities, 5)
    
    print("\n--- 予測結果 Top 5 ---")
    # Top5の結果を一つずつ取り出して表示します。
    for i in range(top5_prob.size(0)):
        # 予測されたクラスIDを取得します。
        class_id = top5_catid[i].item()
        # 【重要】予測されたIDがラベルリストの範囲内にあるか安全確認します。これによりIndexErrorを完全に防ぎます。
        if 0 <= class_id < len(labels):
            # 範囲内であれば、対応するクラス名を取得します。
            category_name = labels[class_id]
        else:
            # もし万が一範囲外のIDだった場合は、エラーとせず、不明なクラスとして表示します。
            category_name = f"不明なクラス_{class_id}"
            
        # 確率をパーセント表示に変換します。
        confidence = top5_prob[i].item() * 100
        # 最終的な結果を表示します。
        print(f"{i+1}. {category_name}: {confidence:.2f}%")
        
    # デバッグや理解のために、各テンソルの形状やIDの情報を出力します。
    print(f"\n--- デバッグ情報 ---")
    print(f"モデル出力の形状: {output.shape}")
    print(f"確率の形状: {probabilities.shape}")
    print(f"ラベル数: {len(labels)}")
    print(f"Top5のクラスID: {[top5_catid[i].item() for i in range(5)]}")
else:
    # input_imageがNoneだった場合(画像の読み込みに失敗した場合)の処理です。
    print("画像が読み込めませんでした。")
--- 事前学習済みViTモデルを読み込み中... ---
--- モデルの準備完了 ---
--- ImageNetクラスラベルを読み込み中... ---
ラベルの読み込みに失敗: 404 Client Error: Not Found for url: https://raw.githubusercontent.com/pytorch/hub/main/imagenet_classes.txt
--- フォールバックラベルを使用 ---

--- サンプル画像をダウンロードしています: https://images.dog.ceo/breeds/hound-afghan/n02088094_1003.jpg ---
--- 画像の準備完了 ---
--- モデルによる推論完了 ---

--- 予測結果 Top 5 ---
1. クラス_160: 88.21%
2. クラス_200: 0.13%
3. クラス_220: 0.05%
4. クラス_176: 0.04%
5. クラス_164: 0.04%

--- デバッグ情報 ---
モデル出力の形状: torch.Size([1, 1000])
確率の形状: torch.Size([1000])
ラベル数: 1000
Top5のクラスID: [160, 200, 220, 176, 164]

どうでしたか?ほんの数行のコードで、世界トップクラスの研究者たちが巨大な計算資源を投じて訓練した、非常に強力な画像認識モデルを、私たちの手元で簡単に動かすことができました。これが、事前学習済みモデルとPyTorchエコシステムの素晴らしい力です。

このコードの入力画像を、皆さんがお持ちの医療画像のファイルパスに置き換え、出力層を自分のタスク(例えば、「肺炎 or 正常」の2クラス分類)に合わせて少し改造(ファインチューニング)するだけで、この強力なViTを、皆さんの研究に直接応用することができます。その具体的な方法については、今後の応用編でさらに詳しく見ていきますが、その基本となる推論プロセスは、まさに今回学んだ通りなのです。

まとめと次のステップへ

今回は、自然言語処理で生まれたTransformerを、画像認識に応用するという画期的なモデル、Vision Transformer (ViT) の全体像を学びました。

  • ViTは、画像を「パッチの系列」として捉え、Self-Attentionによってグローバルな関係性を学習する、新しいパラダイムを提示しました。
  • CNNと比較して、帰納的バイアスが弱い代わりに、膨大なデータでの事前学習によってその真価を発揮します。
  • PyTorchのtorchvisionを使えば、強力な事前学習済みViTを簡単に利用できます。

ViTの登場以降、Transformerベースのアーキテクチャは、画像、言語、そして医療データなど、様々な分野の垣根を越えて活躍の場を広げています。

では、ViTのような巨大なモデルを、手元の限られた医療データで、より効率的に私たちのタスクに適応させるにはどうすれば良いのでしょうか?

次回の第27回では、こうした大規模モデルを低コストでファインチューニングするための強力なテクニック、LoRAとパラメータ効率的ファインチューニング(PEFT)について学んでいきます。

参考文献

  1. Dosovitskiy A, Beyer L, Kolesnikov A, Weissenborn D, Zhai X, Unterthiner T, et al. An image is worth 16×16 words: Transformers for image recognition at scale. In: International Conference on Learning Representations. 2021.
  2. Shamshad F, Khan S, Zamir SW, Khan MH, Hayat M, Khan FS, et al. Transformers in medical imaging: A survey. Med Image Anal. 2023;88:102802.

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第4条(情報の正確性・完全性・有用性)

  1. 本サイトは、掲載する情報(数値、事例、ソースコード、ライブラリのバージョン等)の正確性、完全性、網羅性、有用性、特定目的への適合性、その他一切の事項について、何ら保証するものではありません。
  2. 掲載情報は執筆時点のものであり、予告なく変更または削除されることがあります。また、技術の進展、ライブラリの更新等により、情報は古くなる可能性があります。利用者は、必ず自身で公式ドキュメント等の最新情報を確認し、自らの責任で情報を利用するものとします。

第5条(AI生成コンテンツに関する注意事項)
本サイトのコンテンツには、AIによる提案を基に作成された部分が含まれる場合がありますが、公開にあたっては人間による監修・編集を経ています。利用者が生成AI等を用いる際は、ハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)やバイアスのリスクが内在することを十分に理解し、その出力を鵜呑みにすることなく、必ず専門家による検証を行うものとします。

第6条(知的財産権)

  1. 本サイトを構成するすべてのコンテンツに関する著作権、商標権、その他一切の知的財産権は、本サイト運営者または正当な権利を有する第三者に帰属します。
  2. 本サイトのコンテンツを引用、転載、複製、改変、その他の二次利用を行う場合は、著作権法その他関連法規を遵守し、必ず出典を明記するとともに、権利者の許諾を得るなど、適切な手続きを自らの責任で行うものとします。

第7条(プライバシー・倫理)
本サイトで紹介または言及されるデータセット等を利用する場合、利用者は当該データセットに付随するライセンス条件および研究倫理指針を厳格に遵守し、個人情報の匿名化や同意取得の確認など、適用される法規制に基づき必要とされるすべての措置を、自らの責任において講じるものとします。

第8条(利用環境)
本サイトで紹介するソースコードやライブラリは、執筆時点で特定のバージョンおよび実行環境(OS、ハードウェア、依存パッケージ等)を前提としています。利用者の環境における動作を保証するものではなく、互換性の問題等に起因するいかなる不利益・損害についても、本サイト運営者は責任を負いません。

第9条(免責事項)

  1. 本サイト運営者は、利用者が本サイトを利用したこと、または利用できなかったことによって生じる一切の損害(直接損害、間接損害、付随的損害、特別損害、懲罰的損害、逸失利益、データの消失、プログラムの毀損等を含みますが、これらに限定されません)について、その原因の如何を問わず、一切の法的責任を負わないものとします。
  2. 本サイトの利用は、学習および研究目的に限定されるものとし、それ以外の目的での利用はご遠慮ください。
  3. 本サイトの利用に関連して、利用者と第三者との間で紛争が生じた場合、利用者は自らの費用と責任においてこれを解決するものとし、本サイト運営者に一切の迷惑または損害を与えないものとします。
  4. 本サイト運営者は、いつでも予告なく本サイトの運営を中断、中止、または内容を変更できるものとし、これによって利用者に生じたいかなる損害についても責任を負いません。

第10条(規約の変更)
本サイト運営者は、必要と判断した場合、利用者の承諾を得ることなく、いつでも本規約を変更することができます。変更後の規約は、本サイト上に掲載された時点で効力を生じるものとし、利用者は変更後の規約に拘束されるものとします。

第11条(準拠法および合意管轄)
本規約の解釈にあたっては、日本法を準拠法とします。本サイトの利用および本規約に関連して生じる一切の紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。


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この記事を書いた人

医師・医学博士・AI研究者・連続起業家
元厚生労働省幹部・ハーバード大学理学修士・ケンブリッジ大学MBA・コロンビア大学行政修士(経済)
岡山大学医学部卒業後、内科・地域医療に従事。厚生労働省で複数室長(医療情報・救急災害・国際展開等)を歴任し、内閣官房・内閣府・文部科学省でも医療政策に携わる。
退官後は、日本大手IT企業や英国VCで新規事業開発・投資を担当し、複数の医療スタートアップを創業。現在は医療AI・デジタル医療機器の開発に取り組むとともに、東京都港区で内科クリニックを開業。
複数大学で教授として教育・研究活動に従事し、医療関係者向け医療AIラボ「Medical AI Nexus」、医療メディア「The Health Choice | 健康の選択」を主宰。
ケンブリッジ大学Associate・社会医学系指導医・専門医・The Royal Society of Medicine Fellow

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