[Medical AI with Python: P61.1] ResNetとDenseNet — スキップ接続を用いて勾配消失を克服し、深層学習を可能にした革新的構造を学ぶ

目次

TL; DR (要約)

AIを深くすると学習が止まる「深さの壁」を、シンプルな「バイパス(スキップ接続)」で打ち破った革命。
現代の深層学習の礎となったResNetDenseNetの賢い発想の要点です。

① 課題
(深さの壁)

ネットワークを深くしすぎると、学習信号が届かず(勾配消失)、性能がなぜか悪化する(劣化問題)という致命的な壁がありました。

② ResNetの解決策
(残差接続)

入力からの「変化量」だけを学習。情報の「高速道路(スキップ接続)」を作り、勾配を直接届けることで、劣化を克服しました。

③ DenseNetの進化
(全員野球の接続)

「前の層すべての出力」を次の層の入力に。特徴を徹底的に再利用し、より少ないパラメータで高効率な学習を実現しました。

この章の学習目標と前提知識

この章の学習目標 前提となる知識
  • なぜ単純に層を深くするだけではAIの性能が上がらないのか、その背景にある「勾配消失」「劣化問題」を再確認する。
  • ResNetの核心である「残差接続(スキップ接続)」のアイデアと、なぜそれが劣化問題を解決するのかを理解する。
  • DenseNetの「密な接続」が、ResNetからどのように発想を発展させ、特徴の再利用を促進するかを学ぶ。
  • 事前学習済みモデルを利用した転移学習(ファインチューニング)の重要性と、その基本的な実装の流れを掴む。
  • ResNetやDenseNetが、現代の多くの高度なAIモデルの基礎となっていることを認識する。
  • 深層学習の基本的な概念
    「層を重ねること」「誤差逆伝播」「勾配」といった用語に聞き覚えがあること。
  • CNNの初歩的な知識
    「畳み込み層」や「プーリング層」が画像の特徴を抽出する、という程度の基本的な理解があれば十分です。
  • (推奨) PythonとPyTorchの基礎知識
    コード例の理解を深めるために役立ちますが、必須ではありません。本記事は概念の理解を主眼としています。

はじめに:AIの「深さ」の限界を打ち破った、シンプルな革命

皆さん、こんにちは!いよいよ「拡張編」も、AIのアーキテクチャ設計における、最も重要で、そして美しいブレークスルーの一つに触れる時が来ました。「拡張編」の中でも、特にエキサイティングなテーマだと思います。

これまでの講義で、私たちはニューラルネットワークの層を深くすることの難しさ――特に、学習信号が過去に届かなくなる勾配消失問題や、深いモデルが浅いモデルにさえ負けてしまう劣化問題(Degradation Problem)――という、深刻な壁に直面してきました。「理論上は、層を深くすればするほど、AIは賢くなるはずなのに、なぜ?」この、深層学習における根源的な問いは、長年、世界中の多くの研究者を悩ませ、その進歩を阻む大きな壁となっていました。

それはまるで、天まで届く塔を建てようとしているのに、ある高さを超えると、建材の重み(誤差の蓄積)で、土台に近い部分が崩れ始めてしまうような、もどかしい状況でした。

この巨大な壁を打ち破ったのは、さらに複雑な計算式や巨大な装置ではなく、驚くほどシンプルでありながら、極めて強力な一つのアイデアでした。それが、スキップ接続(Skip Connection)です。

これは、ネットワーク内の情報の流れに、渋滞した一般道を飛び越える「バイパス」「高速道路」を作るような仕組みです。このバイパスがあるおかげで、重要な情報や学習のための勾配が、どれだけ層が深くなっても、途中で薄れたり歪んだりすることなく、ネットワークの入口から出口まで、そして出口から入口まで、スムーズに行き渡るようになったのです。

今回は、この革新的なスキップ接続というアイデアを元に構築され、現代の画像認識AIの礎(いしずえ)を築いた、二つの重要なアーキテクチャ――ResNet (レズネット)DenseNet (デンスネット)――の美しい思想を学びます。この記事では、まずこの二つのモデルが、それぞれ「どのようにして」深層学習の壁を乗り越えたのか、その全体像をダイジェスト形式で探求していきます。それぞれのアーキテクチャのさらに詳細な理論や、PyTorchによる具体的な実装については、今後の個別記事(27.1〜27.4)でじっくりと掘り下げていく予定ですので、今回はまず、その発想の素晴らしさを味わうことを目標にしましょう。

27.1 深層学習の壁であった「勾配消失」と「劣化問題」(再訪)

ResNetやDenseNetの設計思想に深くダイブする前に、それらのモデルが一体「何と」戦い、どのような課題を解決するために生まれてきたのか、その背景をもう一度しっかりとおさらいしておきましょう。私たちがこれまでに何度か直面してきた、深層学習における二つの大きな「壁」についてです。

壁①:勾配消失問題 〜薄れていく「学習の意志」〜

誤差逆伝播(バックプロパゲーション)は、モデルの出力側で生じた「間違い(損失)」を、ネットワークの入口側へと遡って伝え、各層の重みに「君たちはこう修正すべきだ」と指示を出すプロセスでしたね。しかし、ネットワークが非常に深くなると、この指示の声が、層を遡るごとにどんどん小さくなってしまうのです。

それはまるで、山の頂上(出力層)から麓(入力層)に向かって叫んでも、途中の木々や岩(各層での活性化関数の微分など)に反響・吸収されて、麓にはか細い声しか届かないようなものです。

勾配という「学習の意志」が、初期の層に届く頃にはほとんどゼロになってしまう。これが勾配消失問題です。結果として、ネットワークの初期の層(入力に近い、エッジや質感といった基本的な特徴を捉える重要な層)は、自分がどう改善すれば良いのか分からず、ほとんど学習が進まなくなってしまいます。

壁②:劣化問題 〜良かれと思った深層化のワナ〜

そして、もう一つのさらに不可解な壁が、劣化問題(Degradation Problem)です。これは、先ほどの勾配消失とは少し毛色が違います。「学習が進まない」のではなく、「学習を進めた結果、なぜか性能が悪化する」という現象です。しかも、未知のデータに対する性能(テストエラー)だけでなく、学習に使っているデータ(訓練エラー)でさえも、浅いモデルより悪くなってしまうのです。

「過学習」との違いを、下の表で確認してみましょう。

問題の種類訓練エラーテストエラー
過学習 (Overfitting)低い ↓高い ↑
劣化問題 (Degradation)高い ↑高い ↑

前回の講義で見たように、これは深い層が、せめて入力をそのまま通すだけの「恒等写像」すら、うまく学習できないことに起因すると考えられています。

共通する課題と、解決の光

勾配消失も、劣化問題も、その根底には「ネットワークが深くなることで、情報や勾配が、層をまたいでスムーズに伝播しにくくなる」という共通の課題があります。

そして、この根本的な問題を、驚くほどエレガントな一つのアイデアで解決したのが、スキップ接続だった、というわけです。この「バイパス」が、情報と勾配の両方にとっての生命線となったんですね。

27.2 ResNetの革新的なアイデア「残差接続(スキップ接続)」〜「変化量」だけを学ぶという賢い近道〜

さて、深層学習の「深さの壁」という、大きな問題を見てきました。2015年、この壁を打ち破る、まさに革命的なモデルが登場します。それが、今や多くのAIアーキテクチャの基礎となっているResNet (レズネット、Residual Network) です(1)。

ResNetの考案者たちは、こう考えました。

「層に、最終的な出力そのものをゼロから学習させるのが難しいのであれば、発想を変えて、層には入力からの『変化量』だけを学習させたらどうだろう?」

残差学習の仕組み

これを、患者さんの血圧管理に例えてみましょう。

  • 従来の学習:従来のネットワークは、今日の入力データ(現在の食事、運動量など)から、明日の血圧の値そのもの、例えば「130 mmHg」という最終的な値 \(H(x)\) を直接予測しようとします。
  • 残差学習:一方、ResNetは、明日の血圧を直接予測するのではなく、「今日の血圧 \(x\) から、明日の血圧 \(H(x)\) は、どれだけ変化するだろうか(差分 \(F(x)\))」という、変化量を予測します。例えば、「-2 mmHg下がる」という値を予測するわけです。

そして、最終的な予測値は、今日の血圧 132 に、予測した変化量 -2 を足し合わせて、「明日の血圧は 130 だ」と算出します。これが、以下の数式が意味するところです。

\[ H(x) = F(x) + x \]

この、最終出力 \(H(x)\) ではなく、その手前の層の出力 \(F(x)\) が残差(入力からの差分)を学習するように設計する考え方を、残差学習(Residual Learning)と呼びます。

なぜ「残差」を学ぶ方が簡単なのか?

この「変化量を学ぶ」というアプローチの真のすごさは、「変化させる必要がない」場合に、その学習が非常に簡単になる点にあります。

もし、ある層を追加しても性能が改善せず、「何もしない(入力をそのまま通す)」のが最善(つまり恒等写像 \(H(x)=x\))な場合を考えてみましょう。

  • 従来のネットワーク:層は、\(H(x) = x\) という出力を直接作り出そうとします。これは、入力 \(x\) を受け取って、たくさんの重みやバイアスをくぐり抜けた結果が、寸分違わず元の \(x\) と同じになるように、全てのパラメータを神がかり的に調整しなければならない、という非常に難しいタスクです。
  • 残差ネットワーク:一方、ResNetの層が学習すべき残差は \(F(x) = H(x) – x = x – x = 0\) となります。つまり、層は「何も出力しない(ゼロを出力する)」ことを学習すれば良いのです。ニューラルネットワークにとって、出力をゼロに近づけるのは、全ての重みをゼロに近づければよく、非常に学習しやすいタスクです。

このおかげで、ResNetは「この層はあまり仕事をしなくていいな」と判断すれば、その層を実質的に「素通り」させることができます。だから、層をむやみに深くしても、性能が劣化しにくくなったんですね。

スキップ接続:情報の「高速道路」

この残差学習 \(H(x) = F(x) + x\) を、実際のネットワークアーキテクチャで実現するのが、スキップ接続(またはショートカット接続)です。その名の通り、入力 \(x\) が、いくつかの層(\(F(x)\) を計算する部分)を「スキップ」して、その層の出力に直接合流するバイパス経路のことです。

通常のブロック vs 残差ブロック (ResNet)

通常のブロック vs 残差ブロック (ResNet) 通常のブロック 入力 x 層 (W1) 層 (W2) 出力 H(x) 残差ブロック (ResNet) 入力 x スキップ接続 層 (W1) 層 (W2) F(x) + 出力 H(x) ResNetでは入力がスキップ接続により直接出力に加算されます

このスキップ接続がもたらす恩恵は、順伝播だけではありません。むしろ、逆伝播の際にこそ、その真価が発揮されます。勾配消失問題は、勾配が深い層を遡るうちに、信号が薄れてしまうのが原因でした。

しかし、スキップ接続という勾配の「高速道路」があれば、勾配は、\(F(x)\) を計算する複雑な層(一般道)を通るルートとは別に、この高速道路を通って、ほとんど減衰することなく、一気に過去の層まで届くことができるのです。このおかげで、100層、あるいは1000を超えるような超深層のネットワークでも、安定した学習が可能になったのです。

27.3 DenseNetにおける密な接続のアイデアと特徴 〜全ての情報を、次の世代へ〜

ResNetがスキップ接続という「高速道路」を作って、深層学習の壁を打ち破ったお話をしました。その成功を受け、研究者たちはこう考え始めます。「このバイパス、もっと有効活用できないだろうか?一本の高速道路だけじゃなくて、もっと網の目のように張り巡らせたら、さらに情報の流れが良くなるんじゃないか?」と。

この発想を、ある意味で究極まで推し進めたのが、DenseNet (デンスネット、Densely Connected Convolutional Network) なんです(2)。

核心思想:「全員野球」で特徴を再利用する

DenseNetのアイデアは、一言で言えば「ある層は、それより前の全ての層の出力を、自分の入力として受け取る」という、非常に大胆なものです。ResNetが、ブロックの「入力」と「出力」を足し算で結合したのに対し、DenseNetは、過去の層の出力を、チャネル方向に「連結(Concatenate)」していきます。つまり、前の層からの情報を捨てることなく、どんどん追加していく「情報の加筆・継承」のようなアプローチを取ります。

これは、チームでのブレインストーミングに似ているかもしれません。ResNetでは、最初のアイデア(入力)と、議論の末に出てきたアイデア(層の出力)を最後に足し合わせるイメージでした。一方、DenseNetでは、メンバーAが出したアイデア、次にメンバーBがそれを見て付け加えたアイデア、さらにCがAとBのアイデアを見て付け加えたアイデア…と、過去の全てのアイデアを常に参照しながら、新しいアイデアを積み重ねていくようなものです。

DenseNetブロックの概念図

DenseNetブロックの概念図 入力 x 層 1 (出力:f1) f1 x と f1 を連結 (入力:[x, f1]) 層 2 (出力:f2) f2 x, f1, f2 を連結 (入力:[x, f1, f2]) 層 3 (出力:f3) f3 (各層の出力が後続の全ての層に伝わる) DenseNetの特徴: • 各層が前の全層と接続 • 特徴マップを連結で結合 • 勾配流れが改善される

DenseNetがもたらす特徴とメリット

この「全員野球」の構造は、いくつかの素晴らしいメリットをもたらします。

  • 特徴の再利用 (Feature Reuse) 浅い層で学習した単純な特徴(例えば、画像の輪郭や質感)が、深い層まで失われることなく直接伝わります。これにより、深い層はそれらの基本的な特徴を再学習する必要がなく、より高次の抽象的な特徴の学習に集中できるため、非常に効率的です。
  • 強力な勾配フロー (Strong Gradient Flow) ネットワーク内のどの層も、比較的、最終的な出力層や損失関数と直接的に近い関係を持つことになります。これにより、逆伝播の際の勾配が非常に伝わりやすくなり、勾配消失問題がさらに起こりにくくなります。
  • パラメータ効率 (Parameter Efficiency) そして驚くべきことに、この密な構造は、結果的にパラメータ効率の向上にも繋がります。各層は、過去の全ての情報を参照できるため、ResNetのように層ごとに出力する特徴マップの数を多くする必要がありません。比較的少ないパラメータ数で、同等以上の性能を発揮できることが報告されています。

(補足)Transition Layerの役割

ただし、このままでは層を経るごとに入力チャネル数が雪だるま式に増大してしまいます。そこでDenseNetでは、いくつかの層をまとめた「Dense Block」の後には、Transition Layerという層を挟みます。この層は、畳み込みとプーリングによって、特徴マップのサイズとチャネル数を圧縮する「交通整理」の役割を果たし、モデル全体の計算量が爆発するのを防いでいます。

27.4 PyTorchによる転移学習の実践 〜巨人の肩に乗る技術〜

さて、ResNetやDenseNetの素晴らしいアイデアを見てきましたが、いざこれらのモデルをゼロから学習させようとすると、私たちは大きな現実に直面します。それは、ImageNetのような巨大なデータセットと、膨大な計算資源(高性能なGPUを何週間も動かすなど)が必要になる、という現実です。これは、多くの研究室や個人にとっては、なかなかハードルが高いですよね。

しかし、ここでも素晴らしい解決策があります。それが転移学習(Transfer Learning)です。これは、一言で言えば「他人が膨大なデータで学習させた、賢いAIモデルを借りてきて、自分の課題に合わせて少しだけ再教育する」という、非常に賢く、効率的なアプローチです。

例えるなら、医学の全ての分野をゼロから学ぶのではなく、すでに内科の専門医として十分な知識と経験を持つ医師に、追加で「循環器」の専門知識だけを学んでもらうようなものです。基礎がしっかりしているので、ほんの少しの追加学習で、すぐに循環器のエキスパートになれますよね。

ファインチューニングの考え方

転移学習の具体的な手法の一つがファインチューニングです。一般的な画像認識モデルは、大きく分けて二つの部分から構成されています。

  1. 特徴抽出器 (Feature Extractor): モデルの前半部分。画像からエッジ、テクスチャ、パーツといった汎用的な特徴を抽出する役割を担います。ImageNetで学習済みのモデルは、この部分が非常に優秀な「眼」を持っています。
  2. 分類器 (Classifier): モデルの最後の部分。抽出された特徴を元に、最終的なクラス(例:「犬」「猫」)を判定します。

ファインチューニングの戦略は、「優秀な特徴抽出器はそのまま再利用し、最後の分類器だけを、私たちのタスクに合わせて新しいものに交換して、そこだけを重点的に再訓練する」というものです。

転移学習(ファインチューニング)の概念図

転移学習(ファインチューニング)の概念図 事前学習済みモデル (ImageNetで学習) 特徴抽出器 (CNN/ResNetの大部分) (汎用的な眼: エッジ、形など) この部分は「凍結」(学習しない) 元の分類器 (1000クラス分類) この部分は「捨てる」 ファインチューニング ファインチューニング後 特徴抽出器 (凍結して再利用) 新しい分類器 (私たちのタスク用) (例: 2クラス分類 – 疾患あり/なし) この部分だけを「新規作成」して「重点的に学習」させる 転移学習の利点: • 少ないデータで高精度を実現 • 学習時間を大幅に短縮 実装手順: 1. 事前学習済みモデルを読み込み 2. 最終層を自分のタスク用に変更

Pythonコード例:事前学習済みResNetのファインチューニング準備

では、このファインチューニングの準備を、PyTorchのtorchvision.modelsを使って実際にやってみましょう。驚くほど簡単なステップで実現できますよ。

graph TD
    A["開始"] --> B["1. 事前学習済みモデルを読み込む
(ImageNetで学習済みのResNet-50を利用)"]; B --> C["2. 既存の層の重みを凍結
(学習済みの特徴抽出能力を維持するため、
重みを更新しないよう設定)"]; C --> D["3. 最終層(分類器)を交換
(新しいタスクに合わせて出力層を入れ替える)"]; D --> E["4. ファインチューニングの準備完了
(交換した最終層のみが学習対象となる状態を確認)"]; E --> F["終了"];

# --- 1. 必要なライブラリをインポート ---
import torch
import torch.nn as nn
import torchvision.models as models

# --- 2. 事前学習済みのResNet-50モデルを読み込む ---
# weights=... で、ImageNetで学習済みの重みを読み込みます。
# これが「巨人の肩に乗る」瞬間です!
print("--- 事前学習済みResNet-50を読み込み中... ---")
model = models.resnet50(weights=models.ResNet50_Weights.IMAGENET1K_V1)

# --- 3. (オプション)多くの層の重みを凍結する ---
# 転移学習では、事前学習で得られた特徴抽出器の能力を活かすため、
# 初期の方の層の重みは更新しない(凍結する)ことがよくあります。
# ここでは、全てのパラメータの勾配計算を一旦オフにします。
for param in model.parameters():
    param.requires_grad = False # 勾配計算をオフにして、重みを凍結

# --- 4. 最終層(分類器)を私たちのタスクに合わせて交換する ---
# ResNet-50の最後の全結合層の名前は 'fc' です。
# 元のモデルの最終層への入力特徴数を取得します (この場合は2048)。
num_ftrs = model.fc.in_features

# 私たちのタスクのクラス数を定義します(例: 疾患あり/なし の2クラス)。
num_classes = 2

# 元の出力層(1000クラス分類)を、私たちのタスク用の
# 新しい線形層に置き換えます。
# この新しい層の重み(requires_grad=True)だけが、これから学習されます。
model.fc = nn.Linear(num_ftrs, num_classes)

# --- 5. モデルの構造を確認 ---
print("\n--- 最終層を交換した後のモデル構造(末尾) ---")
# モデルの最後の方を表示すると、fc層が私たちの定義した新しいものに
# (out_features=2) に変わっているのが分かります。
print(str(model)[-1500:])

# # この後、この `model` を使って、これまで通りオプティマイザや損失関数を定義し、
# # 私たち自身の医療データセットで訓練(ファインチューニング)を行なっていきます。

# === ここから下が上記のprint文による実際の出力の例 ===
# --- 最終層を交換した後のモデル構造(末尾) ---
# ... (途中省略) ...
#   (1): Bottleneck(
#     (conv1): Conv2d(2048, 512, kernel_size=(1, 1), stride=(1, 1), bias=False)
#     (bn1): BatchNorm2d(512, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
#     (conv2): Conv2d(512, 512, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1), bias=False)
#     (bn2): BatchNorm2d(512, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
#     (conv3): Conv2d(512, 2048, kernel_size=(1, 1), stride=(1, 1), bias=False)
#     (bn3): BatchNorm2d(2048, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
#     (relu): ReLU(inplace=True)
#   )
# )
# (avgpool): AdaptiveAvgPool2d(output_size=(1, 1))
# (fc): Linear(in_features=2048, out_features=2, bias=True)

たったこれだけです!これで、ImageNetの膨大な知識を継承しつつ、私たちの医療画像分類タスクに適応する準備が整った、新しいモデルが手に入りました。この後、このmodelを、第13回で学んだのと同じように、私たち自身のデータローダーと訓練ループにかければ、非常に効率的に高性能なモデルを訓練することができるのです。

まとめと次のステップへ

今回は、深層学習の「深さ」の壁を打ち破った、ResNetDenseNetの革新的な思想を学びました。

  • 残差接続・密な接続というアイデアが、勾配消失問題を緩和し、超深層ネットワークの学習を可能にしました。
  • これらのアーキテクチャは、特に医療画像解析の分野で、今なお強力なベースラインモデルとして広く利用されています。
  • PyTorchを使えば、これらの事前学習済みモデルを簡単に利用し、少ないデータでも高い性能を発揮する転移学習(ファインチューニング)を実践できます。

さて、私たちが扱うモデルはますます巨大で高性能になってきました。しかし、巨大なモデルをファインチューニングするだけでも、依然として大きな計算コストがかかります。

次回の第28回では、このファインチューニングをさらに効率化し、巨大なモデルを驚くほど低コストで私たちのタスクに適応させるための最新テクニック、LoRAとパラメータ効率的ファインチューニング(PEFT)について学んでいきます。

参考文献

  1. He K, Zhang X, Ren S, Sun J. Deep residual learning for image recognition. In: Proceedings of the IEEE conference on computer vision and pattern recognition. 2016. p. 770-778.
  2. Huang G, Liu Z, Van Der Maaten L, Weinberger KQ. Densely connected convolutional networks. In: Proceedings of the IEEE conference on computer vision and pattern recognition. 2017. p. 4700-4708.
  3. Esteva A, Kuprel B, Novoa RA, Ko J, Swetter SM, Blau HM, et al. Dermatologist-level classification of skin cancer with deep neural networks. Nature. 2017;542(7639):115-118. (ResNetベースのモデルが医療応用された初期の有名事例)

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この記事を書いた人

医師・医学博士・AI研究者・連続起業家
元厚生労働省幹部・ハーバード大学理学修士・ケンブリッジ大学MBA・コロンビア大学行政修士(経済)
岡山大学医学部卒業後、内科・地域医療に従事。厚生労働省で複数室長(医療情報・救急災害・国際展開等)を歴任し、内閣官房・内閣府・文部科学省でも医療政策に携わる。
退官後は、日本大手IT企業や英国VCで新規事業開発・投資を担当し、複数の医療スタートアップを創業。現在は医療AI・デジタル医療機器の開発に取り組むとともに、東京都港区で内科クリニックを開業。
複数大学で教授として教育・研究活動に従事し、医療関係者向け医療AIラボ「Medical AI Nexus」、医療メディア「The Health Choice | 健康の選択」を主宰。
ケンブリッジ大学Associate・社会医学系指導医・専門医・The Royal Society of Medicine Fellow

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