プログラムは通常、上から下へ進むだけです。しかし「if文」で条件に応じて判断し、「forループ」で面倒な作業を繰り返すことで、賢く勤勉なアシスタントに進化します。この二つの制御構文は、プログラミング的思考の核となる重要な概念です。
「もし〜なら〜する」という条件に基づき、処理の流れを変えます。比較演算子(>, ==)や論理演算子(and, or)を使い、elif/elseと組み合わせることで複雑な判断が可能です。
リストなどのデータ集合から要素を一つずつ順番に取り出し、同じ処理を自動で繰り返します。多数のデータに対する退屈な反復作業をコンピュータに任せることができます。
はじめに:プログラムに「知性」と「勤勉さ」を
皆さん、こんにちは。前回の講義では、リストや辞書といった「データの入れ物」を学び、複数のデータを上手に整理する方法を身につけましたね。これで、たくさんの患者さんのデータをプログラムで扱えるようになりました。
しかし、今のままでは、私たちのプログラムは書かれたコードを上から下へ、一本道をただ愚直に進むことしかできません。これでは、まだ賢いアシスタントとは言えませんよね。
例えば、「血圧が140以上の患者さんだけをリストアップする」といった条件に応じた判断や、「100人分の患者データそれぞれに対して、BMIを計算する」といった退屈な繰り返し作業をどうすればいいのでしょうか?
ここで登場するのが、プログラムの流れを自在に操るための制御構文 (Control Flow) です。これらを使いこなすことで、私たちのプログラムは、単なる命令の羅列から、状況に応じて判断し、面倒な作業を自動でこなしてくれる、賢く勤勉なアシスタントへと進化します。
今回は、その中でも特に重要な「条件分岐」を行うif文と、「繰り返し」を行うforループについて学びます。この二つをマスターすることは、まさに「プログラミング的に物事を考える力」そのものを身につけることなのです。
1. 条件分岐 (if文) – プログラムに「判断力」を与える
プログラミングにおける最も基本的な「知性」は、ある条件が満たされているかどうかに基づいて、次に行うべき行動を変える、という判断力です。これを実現するのがif文です。
1.1 if文の考え方と構造
これは、医師が患者さんを診察するときの思考プロセスとそっくりです。
「もし (if)、体温が37.5度以上なら、発熱と判断し、解熱薬の処方を検討する」
「そうでなく、もし (elif)、咳がひどい場合は、呼吸器系の検査を推奨する」
「どちらでもなければ (else)、経過観察とする」
といった具合に、条件に応じて異なるアクションを取りますよね。if文は、まさにこの思考の流れをコードで表現するものです。
Pythonでの基本的な書き方は以下の通りです。
if 条件式1:
# 条件式1がTrueのときに実行される処理
elif 条件式2:
# 条件式1がFalseで、かつ条件式2がTrueのときに実行される処理
else:
# 全ての条件式がFalseのときに実行される処理
重要なポイント:
- 条件式の後には必ずコロン
:を書きます。 - コロンの後の行は、インデント(字下げ、通常は半角スペース4つ)を付けます。このインデントされた部分が、その条件に属する処理ブロックであることを示します。Pythonでは、このインデントが文法として非常に重要です。
elif(else ifの略)やelseは任意で、必要に応じて使います。
1.2 条件を作るための「比較演算子」と「論理演算子」
if文の条件式を作るために、いくつかの便利な道具があります。
よく使う演算子の表
| 種類 | 演算子 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| 比較演算子 | == | 等しい | age == 65 |
!= | 等しくない | department != "外科" | |
> | より大きい | blood_pressure > 140 | |
< | より小さい | bmi < 18.5 | |
>= | 以上 | age >= 75 | |
<= | 以下 | ldl_cholesterol <= 120 | |
| 論理演算子 | and | かつ | age > 60 and is_smoker |
or | または | has_fever or has_cough | |
not | ではない | not has_allergy |
特に、=(代入)と==(等しいかどうかの比較)の違いは、初心者がつまずきやすいポイントなので、しっかり区別しましょう。
Pythonコード例:患者のリスク判定
それでは、患者さんのデータに基づいて、簡単なリスク判定を行うプログラムを書いてみましょう。
# --- 1. ある患者さんのデータを変数として用意 ---
age = 70
systolic_bp = 155 # 収縮期血圧
has_diabetes = True # 糖尿病の既往歴
print(f"--- 患者データ ---")
print(f"年齢: {age}歳, 収縮期血圧: {systolic_bp}, 糖尿病既往: {has_diabetes}")
print("--- リスク判定開始 ---")
# --- 2. if-elif-else文でリスクを判定 ---
# まず、最も優先度の高い条件をif文で書きます。
# 年齢が65歳以上「かつ」糖尿病の既往があるか?
if age >= 65 and has_diabetes:
# 上の条件がTrueの場合、このブロックが実行されます。
risk_level = "高リスク"
recommendation = "専門医との定期的な相談を強く推奨します。"
# 上のif文の条件がFalseだった場合に、次の条件を評価します。
# 収縮期血圧が140以上か?
elif systolic_bp >= 140:
# このブロックが実行されるのは、age<65 または has_diabetes=False で、
# 「かつ」systolic_bp>=140 の場合です。
risk_level = "中リスク"
recommendation = "血圧管理と生活習慣の見直しが必要です。"
# 上のどの条件にも当てはまらなかった場合に、このブロックが実行されます。
else:
risk_level = "低リスク"
recommendation = "良好な状態です。引き続き健康維持に努めてください。"
# --- 3. 判定結果の表示 ---
print(f"判定結果: {risk_level}")
print(f"推奨事項: {recommendation}")
# === ここから下が上記のprint文による実際の出力 ===
# --- 患者データ ---
# 年齢: 70歳, 収縮期血圧: 155, 糖尿病既往: True
# --- リスク判定開始 ---
# 判定結果: 高リスク
# 推奨事項: 専門医との定期的な相談を強く推奨します。
2. ループ (`for`文) – プログラムに「勤勉さ」を与える
次に、面倒な繰り返し作業をコンピュータに丸投げするための、魔法のような仕組み、ループについて学びます。その中でも、特に使用頻度が高いのがfor文です。
2.1 for文の考え方と構造
もし、100人分の患者データそれぞれに対して、BMIを計算し、リスク判定を行いたい、と考えたらどうしますか? 100回同じようなコードをコピー&ペーストするのは、非現実的で、間違いの元ですよね。
for文は、リストやタプルのような「複数の要素の集まり(イテラブルと言います)」から、要素を一つずつ順番に取り出して、要素の数だけ同じ処理を自動で繰り返すための構文です。
for 取り出した要素を入れる変数 in データの集まり:
# このブロック内の処理が、要素の数だけ繰り返される
# 「取り出した要素を入れる変数」を使って、各要素に対する処理を記述
if文と同じく、コロン:とインデントが重要です。
Pythonコード例:複数患者のデータ処理
前回の講義で学んだ、リストと辞書を組み合わせて、複数の患者さんデータを一度に処理してみましょう。
# --- 1. 複数の患者さんデータを用意 ---
# 各患者の情報が「辞書」で、その辞書が「リスト」に格納されています。
# これは、実際のデータ分析で非常によく使われる形式です。
patient_list = [
{"name": "田中 太郎", "age": 65, "systolic_bp": 145},
{"name": "鈴木 花子", "age": 52, "systolic_bp": 120},
{"name": "佐藤 次郎", "age": 75, "systolic_bp": 160},
{"name": "高橋 良子", "age": 68, "systolic_bp": 135}
]
# --- 2. forループで、各患者さんのデータを順番に処理 ---
print("--- 全患者の血圧チェック開始 ---")
# patient_list というリストから、患者さんの情報(辞書)を一つずつ取り出し、
# patient_data という変数に入れて、ループを開始します。
for patient_data in patient_list:
# --- ループ内の処理(ここが4回繰り返される) ---
# 取り出した辞書から、名前と血圧の値を取得します。
name = patient_data["name"]
bp = patient_data["systolic_bp"]
# 処理中の患者さんを分かりやすく表示します。
print(f"\n[対象患者: {name} さん]")
# if文を使って、血圧が140以上かどうかを判定します。
if bp >= 140:
# 140以上の場合は、注意喚起のメッセージを表示します。
print(f" --> 警告: 血圧が {bp}mmHg です。注意が必要です。")
else:
# 140未満の場合は、問題ない旨のメッセージを表示します。
print(f" --> 血圧は {bp}mmHg で、基準値内です。")
print("\n--- 全患者のチェック完了 ---")
# === ここから下が上記のprint文による実際の出力 ===
# --- 全患者の血圧チェック開始 ---
#
# [対象患者: 田中 太郎 さん]
# --> 警告: 血圧が 145mmHg です。注意が必要です。
#
# [対象患者: 鈴木 花子 さん]
# --> 血圧は 120mmHg で、基準値内です。
#
# [対象患者: 佐藤 次郎 さん]
# --> 警告: 血圧が 160mmHg です。注意が必要です。
#
# [対象患者: 高橋 良子 さん]
# --> 血圧は 135mmHg で、基準値内です。
#
# --- 全患者のチェック完了 ---
3. まとめと次のステップ
今回は、プログラムの流れを自在に操るための二大巨頭、if文による条件分岐とfor文によるループ処理を学びました。
if文: 条件に応じて処理を変える「判断力」をプログラムに与える。for文: データの集まりに対して同じ処理を繰り返す「勤勉さ」をプログラムに与える。
これらを組み合わせることで、私たちのプログラムは単なる命令の羅列から、状況に応じて判断し、反復作業を自動化する、真に「使える」ツールへと進化します。この「問題を条件と繰り返しに分解して考える」ことこそ、プログラミング的思考の核心部分と言えるでしょう。
さて、if文やfor文を使って、特定の患者データに対する一連の処理を書けるようになりました。でも、もしこの「一連の処理」を、プログラムのあちこちで何度も使いたくなったらどうでしょう?そのたびに同じコードをコピー&ペーストするのは、賢いやり方とは言えませんよね。
次回、「1.5:現場で役立つPython関数入門 ― 繰り返し処理をスッキリ整理」では、こうした処理を「部品化」し、名前を付けて何度も再利用するための、関数について学んでいきます。
参考文献
- Python Software Foundation. Python 3.9.7 documentation – More Control Flow Tools. [Internet]. 2021 [cited 2025 Jun 6]. Available from: https://docs.python.org/3/tutorial/controlflow.html
- Sweigart A. Automate the Boring Stuff with Python. 2nd ed. San Francisco, CA: No Starch Press; 2019. Chapter 2, Flow Control.
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