【作って理解する!シリーズ医療×生成系AI :G1】第1回: 生成系AIとは何か(医療への応用と可能性)@医療AI教室

目次

はじめに

みなさん、こんにちは!
今回からスタートする連載では、「医療の現場や研究に役立つ生成系AI」をテーマに、基礎から応用まで幅広く学んでいきます。最終的なゴールは、自分自身で“生成系AI”をプログラミングし、研究や臨床の課題解決に応用できるようになること。ちょっとスケールの大きな目標ですが、一歩ずつ進んでいけば大丈夫です!

ポイント

  • 「生成系AI」とは、AIが新しいコンテンツ(文章・画像・音声など)を自動的に作り出す技術。
  • 医療では、診断レポート自動生成研究データ補完患者向け説明文の生成など、さまざまな応用が期待される。

なお、連載の途中で「もっとこういう内容も知りたい!」といったリクエストがあれば遠慮なく教えてください。また、AI分野は日進月歩なので、今後の技術動向やフィードバックを反映して、テーマや順番に変更が生じる場合があります。そこは柔軟にアップデートしていく予定です。


そもそも“生成系AI”ってなに?

従来のAIとの違い

まず、「AI」と聞くと、従来は「分析や予測を行うAI」が主流でした。たとえば、

  • 画像認識で「肺がんの疑いがあるかどうか」を判定
    (肺のX線画像を分類するタスク。がんあり/なしなどに分けるもの)
  • 数値データから「患者さんの再入院リスク」を予測
    (血液検査の結果やバイタルサインを入力して、退院後の再入院の確率を求める)
  • テキスト解析で「記事のトピック」を分類
    (論文やニュース記事が「心疾患」「糖尿病」「がん」など、どのトピックか分ける)

こうしたものは、既存のデータを入力し、そこから何らかの答えを出す(分類や回帰をする)AI。いわゆる分析型AIと呼ばれます。

一方、近年注目されているのが生成系AI。これは名前の通り「AIが何か新しいものを生み出す」ことが大きな特徴です。具体的には、

  • 文章を自動で書く
    (チャットボットや要約など。たとえばChatGPTが有名ですね)
  • 画像を合成する
    (GAN※1 や拡散モデル※2を使ってリアルな画像を生成)
  • 音声を作り出す
    (Text-to-Speechにより文章を自然な音声で読み上げる、いわゆるTTS)
  • 複数のデータを組み合わせる
    (マルチモーダルAIで、画像+文章など異なる形式を合わせて新たな表現を作る)

など、AIが「何もなかったところに新しいデータコンテンツを作り出す」点が画期的なのです。

用語解説

  • 1. GAN(敵対的生成ネットワーク): 2つのネットワーク(画像を作るGeneratorと、それが本物か偽物かを判定するDiscriminator)を競わせるように学習するモデル。とてもリアルな画像や映像を生成できる。
  • 2. 拡散モデル: ノイズを付与した画像から、徐々にノイズを取り除いて元の絵を復元する学習を行うモデル。たとえばStable DiffusionDALL-E 2など。GANと比べ、学習の安定性や高解像度の画像生成で注目されている。

医療で生成系AIが求められる理由

医療の現場では、検査や診断だけでなく、レポート作成や患者さんへの説明、研究活動など、ドキュメントを書いたり情報をまとめたりする機会が非常に多いですよね。そこに生成系AIを活用すれば、次のようなメリットが期待できます。

  1. 要約やレポートの自動化
    • X線やCTの所見レポート、患者情報のまとめといった「テキスト作成」をAIが助けてくれると、忙しい医療スタッフの負担を減らすことが可能。
  2. 稀少疾患などのデータ拡張
    • なかなか集めにくい症例をAIが仮想的に“合成”し、解析や研究のデータを補完できるかもしれない。
    • たとえばGANで稀少疾患のX線画像を“増やす”実験が行われており、学習データを増やすことで検出精度向上につなげる可能性がある。
  3. 患者さんへの説明支援
    • 難しい医学用語をわかりやすい一般向けの言葉に“自動変換”してくれたり、音声で読み上げたり。患者教育の質を上げる一助になる。

これらは分析型AIだけではなかなか難しく、「新たなテキストや画像を作れる」生成系AIの強みが生きる分野といえます。


この連載で扱う4つの領域

本連載では、生成系AIを大きく4つの領域に分けて学んでいきます。

  1. テキスト生成
    • 例:ChatGPTのように文章を書いたり、論文を要約したりする技術
    • 医療応用例: 患者さんの症状要約、研究論文の重要ポイント抽出、カルテ内容の半自動作成など
  2. 画像生成
    • 例:GANやStable Diffusionによる画像合成
    • 医療応用例: レントゲンやMRIの合成データで解析モデルの精度向上、病変部位をシミュレーションして研究支援
  3. 音声生成
    • 例:Text-to-Speech(TTS)で文章を読み上げ、特定の人の声を真似るボイスクローンなど
    • 医療応用例: 患者さん向けの説明文を音声化、音声チャットボットによる対話サポート
  4. マルチモーダル生成
    • 例:画像と言語を連携させた「画像キャプション生成」や、音声も含んだ複合AI
    • 医療応用例: X線画像+テキスト情報を統合して所見文を自動生成、あるいは音声入力に対して画像・テキストで回答するアシスタント

連載全体のプラン

ここから先の内容はざっくり以下のようになっています(※アップデートの可能性あり):

  1. 生成系AIとは何か(医療への応用と可能性) ← いまココ!
  2. Pythonと深層学習入門
  3. データ準備と前処理の基礎(医療データの扱い方)
  4. テキスト生成の基礎(RNNによる言語モデル)
  5. 高度なテキスト生成(Transformerと大規模言語モデル)
  6. 医療文書の自動要約
  7. 医療チャットボットの構築(LLMによる問答応答)
  8. 画像生成の基礎(オートエンコーダ・GANによるアプローチ)
  9. 拡散モデルによる画像生成(Stable Diffusionの紹介)
  10. 医療画像データ拡張と合成画像の応用
  11. 音声生成の基礎(音響信号処理と簡単なモデル)
  12. 深層学習による音声合成 (Text-to-Speech)
  13. 医療における音声生成の応用 (音声アシスタント・音響データ拡張)
  14. マルチモーダルAIの基礎(異種データの統合)
  15. 画像と言語の生成モデル(画像キャプションとCLIP応用)
  16. マルチモーダルAIの医療応用(診断支援システムへの活用)
  17. 生成モデルの評価指標と性能向上
  18. 医療における生成AIの倫理・プライバシー・法的考慮
  19. 生成AIモデルのデプロイと実運用への統合
  20. 総括とプロジェクト演習(研究課題へのAI適用)

最終的には、ご自身が解決したい医療分野の課題に対して、ここで学んだ生成系AIをどう活かすかを考え、簡単なプロトタイプまで作れるようになるのがゴールです。大きな道のりですが、一緒に進めていきましょう!


まずはパソコンとネットの準備を!

本記事は導入編なのでコードに触れる内容はほぼありませんが、
「第2回: Pythonと深層学習入門」に向けて、ネットにつながるパソコンの準備は行っておいてください。環境構築などに関する詳細な手順は次回で詳しく紹介します!


まとめ

  • 生成系AI = AIが新たなコンテンツ(文章・画像・音声など)を生み出す技術
  • 医療への応用は多岐にわたる:
    • レポート自動化(診断レポートや文書要約)、
    • データ拡張(稀少疾患の合成データ)、
    • 音声アシスタントなどの可能性。
  • この連載のゴールは、テキスト・画像・音声・マルチモーダルを駆使して、自分の研究・臨床課題に実際に応用するスキルを身につけること。
  • 次回はPython & 深層学習基礎を学び、実際にニューラルネットワークを動かしてみる予定。

「生成系AIを使って何か新しいアイデアを実現したい!」という方は、この連載を活用してぜひスキルを磨いてください。わからないことや「もっと知りたい!」ということがあれば、コメントLinkedinなどでお気軽にご質問ください。私自身、いただいた質問やリクエストをもとに記事をアップデートしていく予定です。


次回予告

第2回: Pythonと深層学習入門

  • Pythonの基礎文法(変数・リスト・制御構造・関数など)を超入門レベルから解説。
  • PyTorchでテンソルを扱う方法、自動微分の仕組みなど、ディープラーニングの基本を体感。
  • 簡単なニューラルネットを実装し、「学習→推論→評価」の流れを実験してみます。

お楽しみに!


注意事項

  • 本シリーズは、記事執筆時点の情報をもとに作成していますが、機能やライブラリのアップデートにより内容が変わる場合があります。
  • 本連載は医療行為のアドバイスではなく、技術学習の一助としてご利用ください。実際に医療現場に導入される際は、法規制やガイドライン(厚生労働省・PMDA・経済産業省・学会など)をしっかり確認し、専門家の助言を仰ぐことをおすすめします。
  • 特に生成系AIを使う場合は、誤情報(ハルシネーション)やバイアスに十分注意し、必ず人間の専門家が結果を検証するプロセスが重要です。
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